食品の健康に対する機能を理解することを目的に、食品に含まれる「機能性成分」、機能性成分が相互作用する体の中の「標的タンパク質」と「作用経路」を研究ターゲットとして、『食品の機能を分子レベルで明らかにする』ことを目指しています。
食品中の「機能性成分」は、栄養成分であることもあれば、それとは異なるユニークな化合物であることもあります。そうした多様な分子の解析には、化学の手法が必要です。また、「標的タンパク質」や「作用経路」の解析には、分子生物学や遺伝子工学などの手法も必要とします。そのため生物活性成分グループでは、化学、分子生物学、遺伝子工学など多様な方法を駆使して研究を行っています。
食べ物の味は口の中の味覚受容体で感知されますが、味覚受容体は口の中以外の組織にもあります。そうした口腔外味覚受容体は、食品の健康に対する機能に関わっていると予想され、研究されています。
生物活性成分グループでは、「苦味受容体」に注目して研究を行っています。苦味受容体は、5つの基本味(甘味、うま味、塩味、酸味、苦味)の感知を司る味覚受容体の中で、数が非常に多いという特徴があります。苦味は生物にとって毒を意味する一方で、ヒトはコーヒー、緑茶、ビールなどの苦い飲料を好んでいるというギャップもあります。口腔外苦味受容体の働きに、このギャップを解明する手掛かりがあるのではないかと考えています。現在は、脂肪細胞における苦味受容体の機能を中心として研究を行っています。
現代社会には様々な健康問題があります。病気であれば薬で治療することができますが、例えば年をとって体が弱くなる「老化」や食べすぎて体重が増える「肥満」などは病気ではなく体にとっては自然な現象で、薬での治療は難しかったりします。食事は毎日摂るものなので、こうした自然な現象に対しても少しずつ少しずつ効果を及ぼすことができます。また病気になる前の予防にも適しています。「新しい機能性成分探索」では、薬では対処しづらい健康問題や、病気の予防を目的に様々な食用素材からの機能性成分の探索を行っています。
老化は体の様々な機能を低下させていき、生活の質(QOL)も低下させます。そのため、老化によって生じる様々な問題をターゲットとして、食品でそうした問題が予防できないか、どのような機能性成分なら効果が期待できるか探索しています。
現在は運動機能や血管機能に注目して研究を行っており、運動機能に関わるステロイドホルモンの生合成を高める食品成分、血管機能に関わるTIE2という受容体に作用する食品成分を研究しています。
食品によるメタボリックシンドロームの予防は、色々なところで行われています。またトクホや機能性表示食品としても各種販売されています。このテーマでは、既存の保健機能食品とは異なる作用を持つ食品成分の探索として、フルクトースの吸収に関わるGLUT5や腸管分泌細胞の苦味受容体を対象とした研究を行っています。