木質分解微生物

icon Streptomyces

Figure 1

キバチ等の昆虫が原因とされる森林侵食被害は、ユーラシア、アフリカ、北米をはじめとした世界各地で報告されており、森林生態系および森林産業に与える甚大な影響が問題となっています 。木質を分解する実体は昆虫に共生する微生物群であることが知られていますが、その詳細については明らかにされていませんでした。最近の先行研究により、北米に棲息するキバチの共生微生物種がメタ解析から明らかにされており、幾つかの木質分解能を持つ微生物が単離されています(Adams et al., 2011, Book et al., 2014)。私達は、その中でも木質分解能が高い Streptomyces sp. SirexAA-E(以下ActE)に着目し、木質分解活性について他微生物と比較したところ、近縁種や商業微生物よりも高い活性を保持していることを明らかにしました (図1)。そこでActEのゲノム情報を解読し、糖鎖依存的な転写調節をトランスクリプトミクス解析により明らかにしました。さらに 分泌タンパク質に対するプロテオミクス解析から木質分解に関わる一連の酵素を明らかにしました(Takasuka et al., 2013)。これらの研究結果から、木質中の糖質分解に重要な働きをしていると考えられる酵素については、組換え酵素を取得し、詳細な酵素機能を生化学的アプローチから解明してきました

日本においてもキバチが引き起こす森林侵食被害が発生していることから、私達は日本に棲息するキバチの 共生微生物を同定し 、北米キバチ由来共生微生物種との菌叢を比較することによりキバチ共生微生物の動態を明らかにしたいと考えています(図2)。例えば、微生物が両共生環境に共通して確認された場合には、各地へ移動する以前からキバチと共生関係であった事を示唆します。一方で、異なる微生物種が確認された場合、キバチ共生微生物群が各地へ移動後の環境に適応したのではないかと考えられます。 また、キバチ共生微生物が保有する木質分解能は木質からのバイオ燃料などの生産へと応用できる可能性があります。したがって、本研究を通し同定された 微生物群から有用な微生物の単離も試みたいと考えています。取得した同定微生物について生理機能や木質分解能を調査し、遺伝子発現解析などにより微生物のキャラクタラズを行う予定です。特に高い木質分解能が確認された種については、遺伝子工学的手法を用いることにより、さらに木質分解能を強化した組換え微生物の作出にも挑戦していきます。

Figure 2

引用文献

Adams et al., Cellulose-degrading bacteria associated with the invasive woodwasp Sirex noctilio. ISME J. 5:1323-1331, 2011

Book et al., Cellulolytic Streptomyces strains associated with herbivorous insects share a phylogenetically linked capacity to degrade lignocellulose. Appl. Environ. Micro. 80:4692-4701, 2014

Takasuka et al., Aerobic deconstruction of cellulosic biomass by an insect-associated Streptomyces. Sci. Rep. 3:1030, 2013