研究内容のご紹介

疫病菌接種源の調製
北海道大学農学部 植物病理学研究室;
ジャガイモ疫病菌 Phytophthora infestans についての研究

ジャガイモ疫病は Phytophthora infestans (学名:ファイトフトラ インフェスタンス)という微生物が寄生することによって起こる植物の伝染病の一種です。気温が低く、雨が多い年には大発生してジャガイモ生産に大きな被害を与えることもある恐ろしい病気です。

ここでは、私たちの研究室で行なっているジャガイモ疫病関係の研究の一部を紹介します。

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カビ(菌類)のように見えますが 原生生物界 ストラメノパイル類 卵菌綱 フハイカビ目 フハイカビ科、
または クロミスタ界 卵菌門 卵菌綱 フハイカビ目 フハイカビ科 に属するとされています。

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日本におけるジャガイモ疫病の防除;解決するべき問題点とは

疫病の発生がみられない畑(北海道帯広市)

ジャガイモは北海道における重要な畑作物です。その生産量や品質を保持するために膨大な労力とコストがかけられており、その結果 全国から高い評価を得ています。

野生種の中から人間が選び出し、改良を加えてきた作物の多くはどうしても病虫害の影響を受けやすくなる傾向があります。これはジャガイモにおいても同様で、 現在でも「病虫害」はジャガイモ生産において大きな脅威となっています。ジャガイモにはいくつかの重要な病害がありますが、ここでは「疫病」という病害について述べたいと思います。

オランダにおける総合防除の例

しかしそれでも、条件によってはジャガイモ疫病の発生が増加することがあります。一般的には「低温で多湿」な環境下で発生しやすくなるといわれています。

疫病はジャガイモ生産に大きな影響を与えている病害です。疫病の発生を防ぐためにさまざまな方法が考案されており、それらを組み合わせた「総合防除」という対策が実施されています。北海道でも関係者の方々の努力でこのような防除法(またはこの一部)が行なわれています。そのために通常の条件下であれば、疫病の発生がひどくなることはそれほど多くはありません。

疫病が発生した畑(北海道帯広市)

つまり現代でも「疫病の起こりやすさ」が「疫病を抑えようとする努力」を上回ってしまう状況が生じているということになります。このようなときはその圃場が「疫病の病害圧力が高まった状態」にあったと考えることができます(病害圧力 disease pressure)。

病害圧力に影響を与える要因としては「宿主」(ジャガイモの品種や生育状態など)、「病原」(病原菌の種類や密度など)、「環境」(温度や湿度、日照など)があります。病害圧力については海外の研究室からいくつかの報告がありますが、日本の状況については不明な点が多く残されています。

(左)疫病がおきやすい状態;畑の中に水はけの悪い部分があり、雨水が溜まっています。このような箇所では疫病菌の活動が活発になります。

(右)疫病の発生;いったん疫病が発生すると葉面に大量の胞子が形成され、周りの植物体に分散します。その結果、罹病範囲は飛躍的に広がります。

現在 私たちの研究室では

病害圧力が低い場合・高い場合それぞれに対応して

効果不足や過剰のない条件でジャガイモ疫病を

確実に防除するにはどのようにすればよいのか

という問題について検討しています。日本における病害圧力をどのように評価するか・そのために病害圧力の主因になっている「病原菌」すなわち日本に存在しているジャガイモ疫病菌の特性や、この菌がさまざまな環境下でジャガイモ植物に対してどのように振る舞うかを調べています。ここから得られる知見は病害防除技術の発展に寄与するだけでなく、微生物生態学の観点からも大変興味深い現象の解明につながるのではないかと期待しています。