【終了】対話イベント「わたしたちの未来と農作物のゲノム編集」開催【応募締切2/5(火)】

対話イベント「わたしたちの未来と農作物のゲノム編集」を開催します

概要

食卓と農業の望ましいあり方を参加者のみなさんで一緒に考えながら,その色々な期待とゲノム

編集技術による農作物の品種改良がどのようにつながるのか,あるいはつながらないのかを考えます。そして,その色々な考え方の違いを見える形にしてみようというプログラムです。

趣旨

みなさんが食や農に求めていることを改めて考え直すことで,ゲノム編集による農作物の品種改良の必要性の有無や程度について考えます。また,ここで出された意見を行政等のステークホルダーに届け,さらなる議論のステップとしていただきたいと考えています。

概要

【日  程】 2019年2月19日(火)11:00~18:00

【場  所】 TKP札幌ビジネスセンター赤れんが前 会議室「チューリップ」

札幌市中央区北4条西6丁目1毎日札幌会館5F(JR札幌駅南口より徒歩5分)

【主  催】 北海道大学大学院農学研究院リスコミ職能教育プロジェクト

【後  援】 札幌市

【対  象】 一般市民

【募集人数】 24名

【参 加 費】 無料(昼食付)

【言  語】 日本語

プログラム 

11:00~12:45 第1部 ランチミーティング「食と農に求めるもの」       

スピーチ:東山 寛(北海道大学大学院農学研究院 准教授)

対話の基盤となる参加者各自の食と農のあり方に関する思い・考え方を共有します。

具体的には事前アンケートに基づく食と農への思いをマップ化したものの確認、意見交換をします。

13:00~15:30 第2部 情報共有「ゲノム編集技術は作物の品種改良に何をもたらすのか?」

スピーチ:大澤 良(筑波大学生命環境系 教授)

スピーチ:立川雅司(名古屋大学大学院環境学研究科 教授)

ゲノム編集技術による植物の育種の現状と技術上の課題を知るために、専門家のお話を聞き、わからないことについて質問する時間を設けます。

 

15:45~18:00 第3部 「みんなで意見を出し合い,見える形にしてみる」

食と農のあり方とゲノム編集技術による植物の育種を重ねたときの考え方を議論し、各自の意見を出し合います。

第1部のマップに重ね書きをして可視化し、共有できるようにします。

 

参加申し込み方法

下記、申し込み用紙にご記入いただき、E-メールまたはFAXでお申し込みください。

なお、応募締切は2月5日(火)とさせていただきます。

申し込み用紙

開催に向けたコメント(吉田省子)

このイベントの開催に至る経緯

遺伝子組換え(GM)技術とは異なる新しい育種技術がいくつも登場してきています。その中でも、ゲノム編集を用いた研究開発が進んでいます。2014年に日本学術会議は報告書『新しい育種技術(NPBT)の現状と課題』をまとめ、社会との対話の必要性を簡潔に述べました。その後、農水省による理解増進のための情報提供活動が行われ、札幌でも開催されています。北大でも実験的な対話の場がつくられました(立川PJ、小林PJ)。

ゲノム編集による植物の育種は、研究開発側の熱意は強いものの、社会の側はとまどっているように見受けられます(2017日本学術会議記録『新しい植物育種技術の現状と社会受容について』)。CRISPR-Cas9が技術的に極めて優れた手法であるとしても、技術上の危うさもまた否定することはできません。GM規制が世界各国で異なっていたように、ゲノム編集においても差が見られ、日本でも規制のあり方に関する議論が始まっています。

しかし、新しい技術が社会に適切に埋め込まれるためには、技術的検証はもちろん欠かせませんが、科学技術路線だけで突っ走るのは早計と思われます。埋め込まれるためには、過不足のない形で情報が社会に示されていくことが必要です。情報には技術以外のことも含まれますし、この過不足なくの内容は、研究開発側や行政だけによってではなく、人々の懸念や関心にも基づき、決められていった方が良いと考えられます。

札幌でNPBTの情報が初めて市民に提供されたのは、2013年11月27日のことです。北海道消費者協会が主催したセミナーにおいてのことですが、私たちも協力しました。そんなわけで、2014年から始まった当プロジェクトでは、最初の段階からNPBTと市民対話が課題に挙げられていました。市民との学習会を続けた後で、少人数の円卓会議という形式でステークホルダー対話を4回実施し、北海道という地場において、市民のコミュニケーションの場をつくるとして何を重視するかに関し議論し、以下のまとめを得ました。

  1. GMの時には、生命の商品化VS知る権利が対立したが、NPBTでは農業・育種の産業革命・工業化VS北海道地域農業(※)となろう。従って、世界各地で起きている農業問題や食糧問題を学ぶ等枠組の中で対話を進めることが大事であり、子や孫の世代の食の形(家族の形や生活形態、農業生産者の割合や産業構造と関連する)を考えることが大事になる。
  2. これは、NPBTによって何を達成したいのか、つまりどのような世界を求めるのかという問いにつながる。NPBTでなければ達成できないのかと問い続けることは重要であり、生産者が希望しても消費者が受け入れなければ先に進まないのも事実である。その技術が社会的合意を得られるかどうかは即断できない。
  3. 技術を進展させる・させないにしても、時間はかかっても何らかの社会的合意を模索することは必要である。テクノロジーに内在する想定できるリスクについて提起してもらい、対話のもとづいて、リスクの性質について理解を深めることが必要(コミュニケーションモード)である。

イベントの趣旨

ゲノム編集という言葉を最近よく聞きます。国はこの技術を推し進めようとしていますが、不安視したり懸念したりする人々もおります。ゲノム編集による作物と言われても、遺伝子組換え作物と違うのか似ているのか同じなのかも分からず、実のところ、遺伝子組換え技術のこともよく知らないという人々が大多数です。また、ゲノム編集が私たちの食卓にどう関係し、食や農の現場に必要なのかどうかも、本当のところよく分かっていません。

私たちは、工業化された農業とそこに寄与する育種なのか、それとも地域や環境との繋がりを重視する農業とそこに寄与する育種なのかという、二者択一を迫られているのでしょうか?日々の食卓を加工品ばかりでよしとするのか、それとも手作りのみが良いものとするのかという、二者択一を迫られているのでしょうか。私たちの暮らしは、これら両極端の間のどこかにあるのでしょうが、一人ひとりの考え方が違っているのは当然です。

ゲノム編集を題材としたリスクコミュニケーションの場合、技術の社会での展開が暗黙裡の前提になっており、必要性をめぐる議論は不必要であるとして脇に追いやられがちです。また、コミュニケーションの場といったものを想像してみるなら、難しい技術の側面だけからのコミュニケーションでは片手落ちだし、面倒くさい倫理的問題や社会的課題の側からだけのコミュニケーションでも、片手落ちです。

では、両者を融合できるでしょうか。私たちはこの課題に挑もうとしていますが、私たちの意気込みだけでは何もできません。場に参加する人々の言葉や考えがあってこそ、それは可能になります。皆様の参加を切望しています。なお、未来の議論に繋がってほしいので、結果を報告書にまとめ、参加者や行政、ステークホルダーの方々に届けようと考えています。

イベントで目指すもの

食卓のあり方と農業のあり方を考えながら、その様々なあり方とゲノム編集技術による植物育種の現状とがどのように繋がるのか繋がらないのかを考え、その考え方の多様性を可視化する。

具体的には次の3つを行う

  1. 対話の基盤となる参加者各自の食と農のあり方に関する思いを共有する。そのために、事前にアンケート調査をして整理し、当日公表する(マップ)。
  2. ゲノム編集技術による植物の育種の現状と技術上の課題を知る。そのために、情報提供と質疑応答とグループ対話を組み合わせる。
  3. あり方とゲノム編集技術による植物の育種を重ねたときの考え方を議論し、各自の意見を出し合い、共有する。1.のマップに重ね書きをして可視化する。