2018年度大学院リスコミカリキュラム
「食のリスクコミュニケーション論」を開講しました。
大学院の共通授業科目として「食のリスクコミュニケーション論」を開講しました。この授業科目は集中講義として7/7,8,21,22の4日間で15回分の授業を開講し、13名の大学院生が受講しました。
内容はリスク問題、リスクコミュニケーションに関する幅広い分野の知識を得るための講義と実際のリスクコミュニケーションの場づくりをするスキルを身に着けるための実習を行いました。実習では模擬的なリスクコミュニケーションを企画段階からつくりました。また、身に着けた知識やスキルをより深めていくための意見交換などを中心にした演習も取り入れました。また講義の事前学習として、インターネットを通じた映像視聴も実施しました。
実習では、教員から提示したテーマである「エゾシカ/ジビエ」、「福島県における米の放射性物質全量全袋検査」、「GMO/NPBT」の3つの班に分かれてそれぞれのテーマを扱ったリスクコミュニケーションの企画を作り、模擬的に実施しました。参加者、主催者はすべて実際には受講した大学院生ですが、研究者や消費者などの“役”になってリスクコミュニケーションを模擬的に実施しました。
スケジュール
7月7日(土) | |||
9:00 | 9:15 | ガイダンス | |
9:15 | 10:45 | 講義1 | リスクコミュニケーションに至る背景 |
11:00 | 12:15 | 講義2 | リスクとは何か? どのようなコミュニケーションが有効か? |
13:15 | 14:45 | 講義3 | リスクコミュニケーションの機能 ―食と農のリスクコミュニケーションの特徴― |
15:00 | 16:50 | 演習1 | 食と農に関するリスク問題 -見えているもの・いないもの- |
16:50 | 17:30 | 実習1 | 「フレーミングを決める」 |
7月8日(日) | |||
9:30 | 10:45 | 講義4 | リスク“コミュニケーション”とは何か ―コミュニケーション・デザイン― |
11:00 | 12:15 | 講義5 | リスクコミュニケーションの“場”のデザイン・手法 ―イベント・デザイン― |
13:15 | 14:05 | 演習2 | 実習・実践に向けての心構え |
14:15 | 17:30 | 実習2 | 「コミュニケーション・デザイン」 |
7月21日(土) | |||
9:30 | 11:00 | 講義6 | ファシリテーター ―その役割と必要性― |
11:10 | 12:30 | 実習3 | 「イベント・デザイン」 |
13:30 | 17:30 | 実習4 | イベント準備 |
7月22日(日) | |||
9:30 | 10:20 | 実習5 | プログラム準備ーリハーサル |
10:30 | 11:50 | 実習6 | 模擬リスクコミュニケーションの実践① |
12:50 | 14:10 | 実習7 | 模擬リスクコミュニケーションの実践② |
14:25 | 15:45 | 実習8 | 模擬リスクコミュニケーションの実践③ |
16:00 | 17:30 | 演習3 | 模擬リスクコミュニケーションを終えて |
実習
「エゾシカ/ジビエ」班はエゾシカの食肉利用であるジビエを食べる際の感染症を主とした食中毒のリスクにテーマを絞ってリスクコミュニケーションを行いました。食肉利用を推進する立場に立って、食中毒の基本的なリスクと対策としての加熱調理重要性、また狩猟、加工、流通小売の各段階での食中毒を防ぐための取組について情報提供を行いました。そのうえで、参加している消費者、飲食店や猟師などがそれぞれの立場から意見を出し合い、食中毒について気を付けるべき点を一緒に考えるワークショップを行いました。
「福島県における米の放射性物質全量全袋検査」をテーマにした班では、現在、実際にも検討が進められている全量全袋検査の見直しを中心の話題とするリスクコミュニケーションとした。これまでの検査体制とその結果、また農作物を栽培する段階での対策などの情報提供を研究者や行政が行った上で、消費者である参加者が意見を出し合い、今後の検査の方向性について提言を行うことを目指す話し合いを行った。
「GMO/NPBT」の班は、GMO・NPBTという賛否が分かれ、かつ分かりにくい新しい技術に対して、一般市民が漠然としたイメージから一歩進んだ意見をもってもらうことを目的とした。まずGMOとNPBTについてそれぞれどのような技術であり、現在の世界各国での規制など社会的な状況について研究者、専門家からの情報提供のあと、一般の参加者が専門家と対話をすることで、自分たちがGMOやNPBTについてよりはっきりした意見をもってもらうことを狙いとする形式とした。
演習
またカリキュラムのなかでは、講義を補うための演習をおこない、講義で得た知識を実習で活用する手助けとしました。1日目には「食と農に関するリスク問題」として、実習でテーマとするリスク問題の概要を紹介しつつ、ワールドカフェの形式を使って受講生同士で意見交換をしました。2日目には講義に関しての質疑応答をしつつ、班毎に実習に向けた“心構え”を整理しました。4日目では、班での模擬リスコミの評価・反省と、各個人での授業全体を通じた振り返りを行いました。