これまででてきたのはプロトンとカーボンのNMRだったが、その他の核のNMRも測定でき、さまざまな研究分野に活用されている。教科書や種々の付録などに、NMR table やNMR周期表が掲載されていることがあり、これにスピン量子数、天然存在比、共鳴周波数などのNMRパラメータがまとめてる。
NMRでは核スピンを観測している。それぞれの原子の同位体ごとに固有の核スピン量子数(I)という物理量があり、これがゼロである核は観測できない。原子核の陽子数と中性子数によって核スピンが4種類に分類でき、陽子、中性子ともに偶数である核はI=0で観測できない。
陽子数 | 中性子数 | スピン量子数 | |
---|---|---|---|
偶偶核 | 偶 | 偶 | ゼロ |
偶奇核 | 偶 | 奇 | 半整数 |
奇偶核 | 奇 | 偶 | 半整数 |
奇奇核 | 奇 | 奇 | 整数 |
Iが1以上の核には四極子モーメントQが存在し、四極子緩和によるシグナルのブロードニングがみられる。ブロードニングがそれほどない場合には、I=1/2の核以上な複雑な分裂が観測される。たとえば重水素化溶媒のカーボンや残留プロトンのシグナルは、I=1である重水素のカップリングで数多く分裂し、またブロードニングしている。
核固有のパラメーターである磁気回転比(γ)により、外部磁場中での共鳴周波数が決まる。またγが大きいほど感度が高い。これと天然存在比、四極子モーメントから相対感度が計算されている。
天然存在比が低い核でも四極子モーメントがさほど大きくなければ同位体ラベル化により感度が飛躍的に向上する。タンパク質のNMR解析では13C、15Nでの全ラベルまたは部分ラベル化を組み合わせて解析が行われるのが普通である。いわゆる天然物でも培養により得られるものの場合、培地にラベル化した物質を添加することで13Cの濃度を高めた試料を使うことは有効である。単純に計算して濃度がn倍になれば測定時間は1/n2ですむので、13C数%程度の取り込みでも大きな寄与となる。