北海道大学農学部 GC-MS & NMR 室は農学部の共同利用施設で、北大全学からの分析依頼を受け付けています。先代から伝承されている自作エミッターによるFD-MSを得意としています。
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分子の質量の情報を得るイオン化法では、無極性からクロロホルム:メタノール可溶の配糖体程度の極性の化合物にはFD/FIが、それより極性が高く酸素や窒素原子をおおむね3個以上含みメタノール可溶な化合物にはESIが適しています。その境界は厳密ではなく、いずれの要件も満たしていればどのイオン化法でもよくイオン化します。その場合のイオン化のソフト・ハードについては、ソフトなほうから順に
ESI>FD>FAB>APCI>EI
となります。
化合物の性質に合わないイオン化法で測定すると、強度が低下したり、フラグメントイオンが強くなって分子の質量の情報が得られなくなったりします。
フラグメントイオンから構造情報を推定するために測定するEI-MSは、FD-MSで測定できる範囲で、かつ分子量が千程度までの化合物で測定できます。EI-MSで分子イオンピークが得られるかどうかは、分子構造に依ります。
分子量や極性がEI、FDの範疇を超える場合には、北海道大学グローバルファシリティセンター機器分析受託部門のESIにお申込みいただくか、北海道大学オープンファシリティのMALDI-TOFMSをご利用ください。農学部のVoyagerも登録されています。
EI-MSは分子イオンおよびフラグメントイオンピーから構造が推定できます。フラグメントイオンの生成は一定の規則に従って起こり、たとえば、水酸基を持つ物では脱水ピーク(分子の質量-18)、TBDMSなどの保護基を持つ物では脱メチル、脱tBuなどが起きやすく、構造によって分子イオンピークは出ない場合もあります。スペクトルのパターンの再現性が良く、データベースから測定データと類似するデータを検索したりできます。
スペクトルで得られた特定のイオンについて、質量校正物質との同時測定を行うなどして0.1mDaの位まで精密に測定します。この結果と、同位体の正確な質量を使って計算した質量と近い値を持つ組成式をコンピューターで選び出します。この計算に際して含有元素や不飽和度にある範囲を持たせる必要があります。
EI-MSで分子イオンピークが出ない場合でも、妥当なフラグメントイオン(脱tBuなど)があればこのイオンのHR-MSを測定できます。
EI-MSの直接導入では、試料を「キャピラリ(上左図)」をつけた「プローブ(上右図)」使って、質量分析装置のイオン化室の中へ入れます。キャピラリを装置の中に入れ、イオン化室と同じ減圧状態にするあいだに、溶媒は揮発してしまいます。揮発性の高いサンプルでは、このときに一緒に気化してしまって測定できなくなりますので、直接導入法ではなく、GCからサンプルを導入します。イオン化室で気化したサンプルが、電子流の中を通過するときにイオン化されます。
FD-MSでは、細いワイヤー上にカーボンの結晶を成長させたエミッターの上にサンプルを載せ、これをプローブを使ってを使ってイオン化室の中へ入れます。プローブをイオン化室と同じ減圧状態にするあいだに、溶媒は揮発してしまいます。揮発性の高いサンプルでは、このときに一緒に気化してしまって測定できなくなりますので、GCから気化したサンプルを導入する、FI-MSとします。
いずれも、直接導入ができるかGCからの導入になるかの境目は沸点600K付近です。お申し込みのときにFDとFIの区別はしなくて結構ですが、文献値やChemDrawの機能で計算された沸点があれば参考にしますので、申込用紙に記入してください。
農学部GC-MS・NMR測定室(GC-MS & NMR Laboratory, Faculty of Agriculture)で測定したデータを印刷公表される場合は、さしつかえない限り当測定室で測定した旨を付記し、その別刷りを一部測定室に御寄贈くださるようお願いします。