通常の質量分析は、試料を導入(導入方法はInletの項、ここではDirect)したらイオン化(Ion Mode、この例ではEI、正イオン)を開始しデータを取り込む。測定質量範囲(EIではm/z35〜800程度)の走査(Scan)を1〜5秒程度の間隔で繰り返し1 ScanごとのMSスペクトルをすべて保存しておく。EIではheaterで徐々に加熱していき、総イオン強度が大きくなったScanのスペクトルを打ち出している。そのときのScan番号が、下記Scan#、測定開始からの経過時間がRT、そのときのヒーター温度(GC-MSではオーブンの温度)がTempである。Output m/z rangeは書き出しの質量範囲であり実際の測定範囲より狭いこともある。
一部の機種では、2000年以降Date欄の年を西暦-1900と表示してしまっております。(2000年1月4日は 04-Jan-100)。
イオン化法がFD, FIの場合ともにIon Mode欄にはFD+と表示されてしまいますので、その区別をSampleあるいはNote欄に示しています。
例)
[ Mass Spectrum ] Data : 2 Date : 10-Jun-99 14:25 Sample : 4134 Fukushi / isovaleric acid Note : http://www.agr.hokudai.ac.jp/ms-nmr/ Inlet : Direct Ion Mode : EI+ Spectrum Type : Regular [MF-Linear] RT : 0.50 min Scan# : 11 Temp : 35.8 deg.C BP : m/z 60.0000 Int. : 162.75 Output m/z range : 35.0000 to 120.0000 Cut Level : 0.00 % |
背が低いピークを良く見えるようにするために縦方向に拡大することがある。この例では、m/z 90 以上を10倍拡大している。下の表からm/z 102のピーク強度は1.25%であるがm/z 69 (9.05%)と同じ程度の高さにまで拡大して描かれている。
EI-MSのフラグメントイオンのようにイオン強度比が意味を持つ場合に、相対強度であらわしたデータテーブルが有効である。相対強度はスペクトル中の最大ピーク(BP:base peak)に対する比であらわす(テーブルのNormの値)。テーブルのヘッダは基本的にはスペクトルの物と同じだが、Cut Levelが設定してあり、相対強度がそれ以上のピークを拾っている。
スペクトル上でピークにm/z値をどのように振る(ピークラベル)かをデータ処理者が指定できないソフトウエアもある。ピークラベルが振られていないピークのm/z値を知りたい場合にもテーブルを使う。なお、無意味なピーク、ノイズにもピークラベルが振られることがあるので、試料由来のピークかどうかの判定にピークラベルの有無を使ってはならない。
m/z Int. Norm. 37.0000 1.78 1.09 38.0000 3.96 2.44 39.0000 29.71 18.25 40.0000 11.53 7.09 41.0000 60.88 37.40 42.0000 17.31 10.64 43.0000 47.76 29.34 44.0000 4.74 2.91 45.0000 25.04 15.39 50.0000 1.82 1.12 51.0000 1.73 1.07 53.0000 2.65 1.63 55.0000 5.81 3.57 56.0000 6.45 3.97 57.0000 4.69 2.88 59.0000 6.79 4.17 60.0000 162.75 100.00 61.0000 14.22 8.73 68.0000 1.67 1.03 69.0000 14.73 9.05 74.0000 2.42 1.49 83.0000 1.63 1.00 84.0000 2.94 1.81 85.0000 2.81 1.73 87.0000 35.99 22.11 88.0000 1.91 1.17 102.0000 2.03 1.25 |
『 EIで「出ない」』というのには二通りあり、分子イオンピークが出ない場合と気化・イオン化しない場合がある。前者の場合は妥当なフラグメントイオンがあり解析が可能であるが、後者の場合は他のイオン化法を試したほうが良い。