NMR生データを手に入れたら〜応用編

このページは、本学部装置のユーザー向けに作製したTopSpin導入マニュアル(私家版)をWeb化したものです.

測定と同じソフトウエアTopSpinをアカデミックフリーでデータ処理に使えます. Windows,Mac,Linux版があります.フーリエ変換した結果をそのまま開くことができるほか,NMR測定の際に読み込まれたデータ処理パラメータが引き継がれるため、データの再処理が容易に行えます.また,ほかの機種で測定したデータも扱うことができ,それを二次元スペクトルのプロジェクションとして貼り付けることもできます.

信号/ノイズ比(s/n)計算

デフォルト条件でのプロトン測定のs/nを求めて,他の測定に必要な積算回数の目安としよう.

Analysis→SiNo→Signal/Noise Ratio:Setupをクリックする.シグナル領域をドラッグ,シグナルなし領域をドラッグ,続いて右クリックしStart S/N calcuration を選択すると,結果が表示される.

比較は,シングレットメチンに換算して条件をそろえる.

積算回数をそろえるか,s/nは積算回数の√に比例することから換算してもよい.

カーボンとプロトンの感度比はプローブによって異なる.

下表は当方のBBO(1Hが外巻)プローブの積算回数の例.1Hは30度パルス16回積算.カーボンの積算回数を見積もるときはシングレットメチンのs/n,2Dの積算回数を見積もるときは見たいシグナルのs/nを使う.
s/n13CCOSYHSQCHMBCNOESY
≧400128x36(4h)1242
200-400128x140(16h)14168
100-200128x560(64h)4166432

1Hスペクトルをオールインワンに書き出す

データを確認・解析するにはソフト上で見る方が便利で、ピークテーブルは表計算ソフトの方が扱いやすいかもしれないが、提出や保存用にはPDF(あるいは紙)に、必要な情報をまとめて載せたいときもあるだろう.目的の形にするのには、何通りかの方法があるので、一例を示した.参考にしてほしい.まず、Plotの基本操作を、本編で確認いただきたい.

完成図

Plotタブ最初の画面

Plotタブを開くと、ProcParsタブのレイアウトファイルとPlotタブのAutomation設定に従って描画される.左側のPlotメニューは、描画エリアのパーツをクリックすると、サブメニューに切り替わる.下の例では左から2番目〜4番目はスペクトルをクリックした際のサブメニュー3種で、互いに青字をクリックすると切り替わり、サブメニューの右上の▲をクリックすると一番左のメニューに戻る.

描画エリアの各パーツが選択されている状態(枠に緑色の■が表示されている)で、拡大、縮小、移動が可能.また、右クリックで編集用のメニューが表示される.

書き出し範囲(ppm)

スペクトルをクリックしてサブメニューのAxesを表示させてPlot limits に数値で指定する.PeaksのサブメニューのPlacementと間違えやすいが、こちらは、画面上での表示位置とサイズの指定である.

縦拡大

スペクトルが選択されている状態(枠に緑色の■が表示されている)で、マウスのホイールでの縦拡大や、TopSpinメニューのをクリックするか上でドラッグしての縦拡大を変更、上でドラッグしてベースラインからの距離の移動をさせることができる.

スペクトル上に積分を描く

サブメニューのIntegralsで、積分曲線(Curve)と値(Labels)のチェックで指定する.色はIntegralsの右の■をクリックして変更する.積分曲線の縦拡大やベースラインからの距離を変えるには、Use For shift/scaleにチェックを入れて、TopSpinメニューのをクリック、上でドラッグして縦拡大を変更、上でドラッグしてベースラインからの距離を移動させることができる.

スペクトル上にピークピックを描く・描かない

プロトンではピークのppm, Hz両方の値が知りたいため、ピークピックを描くよりはピークテーブルを載せる方が便利.カーボンではHzは通常は見ないのでスペクトル上に表示すると便利なこともある.ピークピックを書くか書かないかは、サブメニューのPeaksのMarks(ピークの上の印)、Label(値)のチェックで指定する.色はPeaksの右の■をクリックして変更する.

ピークリストを載せる
  1. ピークピッキングを行ってある状態で、
  2. コマンド入力 convertpeaklist txt[ENTER]する
  3. 該当するProcNoのフォルダの中に、peak.txtというファイルが生成する.
  4. Plot画面のメニューからNMR要素の挿入をクリック、Text from data setを選択.
  5. カーソルを描画領域の開いているところに入れてクリックすると no filename specified というテキスト領域が作られる.
  6. それをクリックすると、テキストファイル用のサブメニューが開くので、Automatic Fnt Resizing にチェックを入れる.
  7. External Text File ファイル名入力欄に +/peak.text とすべて小文字で入力し、Setをクリックする.
  8. 挿入したテキスト領域をマウスで広げると、ピークリストが見える.

拡大図を挿入する

上記でピークや積分を望みの表示にしてから、そのスペクトルを縮小させて領域をあけてから、右クリック、Duplicateして生成されるコピーを、ドラッグして配置してから、表示範囲を設定すると良い.

Plotタブのリセット設定・レイアウトファイルの保存

Plotタブは開くたびに表示範囲がリセットされる設定(下図左)になっていることがある.これは多くの似たサンプルの条件をそろえて自動で書き出しするときには便利な設定で、範囲のスペクトル左端と右端のppm設定(FP1, FP2)はProcParsタブの値に従う.

この設定が不便な場合、下図中央のようにXやYをDon’t changeにして、Apply Nowしてから、PlotのメインメニューからLayout>Save asし、次からはこれをLayoutに呼び出して使うと良い.それでもタブを開くと表示はリセットされやすいので、一気に描き上げる方がよい.

13Cスペクトルをオールインワンに書き出す

カーボンの一次元スペクトルの書き出しは、基本的にはプロトンと同じであるが、積分はしない.この例ではピークピックをスペクトル中に表示させている.

完成図

作ったレイアウトファイルを名前をつけて保存しておくと良い.

13CとDEPTを一緒に書き出す

カーボンとDEPTを3段に書き出す場合の慣例に従い、下から順にカーボン、DEPT90°、DEPT135°の順に並べて、軸はカーボンだけに描き、表示範囲をそろえる.ピークリストとパラメータはカーボンのものとなる.

完成図

それぞれの化学シフトを合わせ、ピークピックを行う 

SPECTRUMタブで、本編の化学シフト合わせに従い、カーボンの化学シフトを溶媒または化学シフト基準物質で合わせ、続いてDEPT90°、135°のそれぞれを任意のピークまたはSR値で合わせる.3つのスペクトルのピークピックを行い、ピークリストを、プロトンの書き出しにならってテキストデータにしておく.DEPTのピークリストも載せたいときは、エディタアプリ(メモ帳など)をつかってカーボンのピークリスト ProcNo/pdata/ProcNo/peak.txt にDEPTのリストを書き足しておく.

SPECTRUMタブで多段表示を行う
  1. SPECTRUMタブでカーボンのデータを表示させた状態で、をクリックして多段表示モードに入る.タブが並んでいたところに多段表示のアイコンが表示される.

  2. データ一覧から、DEPT90°のデータをスペクトル表示領域へドラッグすると、カーボンのデータの上に表示される.続いてDEPT135°のデータをドラッグすると、3段に表示され、左下にデータリストが表示される.
  3. でベースラインが同じ位置と浮かせて表示が切り替わる.
  4. この状態でマウスを使ったスペクトルの拡大縮小は3つに対して同時に行われる.
  5. データリストのファイル名か、スペクトルの右上の□をクリックすると、一つのデータが選択され、この状態でマウスや多段表示アイコンを使った縦拡大縮小、上下移動はこのデータに対してのみ行われる.ここで調節した高さはPLOTタブには引き継がれない.スペクトル上の□以外をクリックすると選択は解除される.
  6. ピークのずれなどがないか確認してをクリックして多段表示から抜ける.

書き出し画面の作成
  1. PLOTタブを開く.
  2. 左下のPortfolioの▼からLoad collection from multiplet display mode をクリックすると、多段表示の際のファイルリストの内容がPortfolioに表示される(上下が逆になっているが1,2,3の番号は同じ).

  3. Layoutの▼を開きレイアウトファイル一覧から +/1D_X.xwp か、カーボンでカスタマイズして保存したファイルを選ぶ.
  4. カーボンのピークリストを表示させる方法はプロトンと同じ.
  5. 表示範囲(ppm)やピークピックなどを設定してから、右クリック>Dupplicate で複製して上に並べる.
  6. 中段のスペクトルをクリックし、左のメニューからAxesのチェックを外す.PortfolioからDEPT90°のデータをここへドラッグし、高さを調節する.
  7. 上段のスペクトルをクリックし、左のメニューからAxesのチェックを外す.PortfolioからDEPT135°のデータをここへドラッグし、高さを調節する.負のピークが切れないように、描画位置を下へ伸ばし表示位置を上に上げる.
  8. 必要なら拡大図をつける.

作ったレイアウトファイルを名前をつけて保存しておくと良い.

二次元の印刷

二次元の印刷では、グリッド線を引くと便利である.1H/1H 相関で、縦横の表示範囲をそろえて正方形に描き出す例もあるが、紙一杯に大きく描いた方が解析しやすいことが多い.

完成図

二次元一緒に表示する一次元スペクトル(プロジェクション)を設定する(SPECTRUMタブでの操作)

実測スペクトルの場合

  • 本編を参考に、表示させる一次元スペクトルをDataDrawer上で右クリックしてファイルを指定する.
  • 一次元スペクトルと化学シフトがあっていなければ、本編を参考にそれぞれ合わせなおす.
  • データ処理と測定のパソコンが別の場合、SPECTRUMタブで良いように見えてもPLOTタブでプロジェクションが表示されないことがある.その場合、上記の方法で設定する.
  • PLTOタブを開いても変更が反映されない場合は、SPECTRUMタブでコマンド入力plot[ENTER]でPLOTタブを作りなおすと良い.

  • ブルカー形式ではないNMRファイルを指定するには、必要なら本編を参考に変換したのち、一次元表示領域を右クリックし、External Projectionsで開く.

カーボンが測定できなかった場合などに、一次元スペクトルではなくプロジェクション(投影)を表示させるには、

  1. まず化学シフトを合わせる
  2. プロジェクション表示領域で右クリックし、InternalProjectionsを選択する.

    描き出しにも使いたい場合、SPECTRUMタブでF1表示させるだけではPLOTタブには反映されない.

  3. SPECTRUMタブで、コマンド入力proj[ENTER]するか、メニューProcess>Advanced>Calc.Projectionsを選択する.
  4. Calculate positive projection にチェックを入れる
  5. Projection (sum) of = をcolumns にする(二次元スペクトルの上に表示させるプロジェクションを作るときはrows)
  6. Last row/col = は ProcPars タブの SI のF1(二つ並んだ右)の値にする.
  7. Destinatin PROCNO = この例では3.1以外の数にする.
  8. OKをクリックする.おなじExpNoのProcNo=3にProjectionが生成し、二次元スペクトルのプロジェクションとして表示される.

    HSQCのように正負がある場合さらに、

  9. もういちどproj[ENTER]するか、メニューProcess>Advanced>Calc.Projectionsを選択する.
  10. Calculate negative projection にチェックを入れる
  11. Projection (sum) of = をcolumns にする(二次元スペクトルの上に表示させるプロジェクションを作るときはrows)
  12. Last row/col = は ProcPars タブの SI のF1(二つ並んだ右)の値にする.
  13. Destinatin PROCNO = 先ほどと異なる数たとえば4とする.
  14. OKをクリックする.
  15. コマンドラインから、rep(スペース)3[ENTER]すると、正のプロジェクションが表示される.
  16. をクリックして多段表示モードに入る.
  17. rep(スペース)4[ENTER]すると負のプロジェクションも表示される.
  18. で差スペクトルが一番上に表示される(負のピークも上向きになる).

  19. をクリックすると差スペクトルの保存先のProcNoをきいてくるのでたとえば5として保存する.をクリックして多段表示モードから抜ける.
  20. rep(スペース)1として二次元スペクトルに戻る.
  21. DataDrawer領域で二次元スペクトルのExpNoの左の+をクリックすると作業中に生成したProcNoが並んでいる.目的のもの(この例では5を右クリックして、Display as 2D projectionを選択、F1をクリックする.

  22. PLTOタブを開いてもプロジェクションが表示されない場合は、SPECTRUMタブに戻りコマンド入力plot[ENTER]でPLOTタブを作りなおすと良い.
等高線の間隔の設定

等高線の間隔はSPECTRUMタブでの設定が引き継がれる.

  1. をクリックすると等高線設定ウインドウが表示される.

  2. 等高線の間隔を狭くするにはLevel incrementを小さく、等高線の最大段数をNumber of levelsで設定して、
  3. Fillをクリックすると上半分の数字が並んでいる部分が書き換わる.
  4. Applyをクリックすると、この設定でSPECTRUMタブが再描画される.
  5. OKでこのウインドウを閉じる.
  6. をクリックするとこの設定が保存される.
PLOTタブを開き、元にするレイアウトファイルを選ぶ

二次元で縦方向にも1Dスペクトルを貼り付けるには2D_2pro.xwpを元にすると良い.

描画領域で各要素の位置と大きさを決める.

正方形に表示するには、Units, Levels, Size...のメニューのPlacementのDim.の二つの入力枠を同じ値にする.

二次元スペクトルをクリックすると緑色の■が現れ,左のメニューもスペクトル編集用に変化する.この状態でのスペクトルの拡大は,SPECTRUMタブと同様に行える.等高線のレベルをマウスホイールなどで設定する.選択解除はSpectrumタブとは異なり、別の部分を選択する.

1D部分をクリックするとその部分が編集可能となる.スペクトルの高さを調節しておく.

PLOTタブでの等高線の色の設定

等高線の色はUnits, Levels, Size...のメニューのContour AttributesのPositiveおよびNegativeの右の■をクリックして色と線の種類を指定する.慣例では負を赤で描き、モノクロ表示では負を点線で描くものが多い.

グリッド線を引く

二次元スペクトルをクリックしてスペクトル編集用メニューを表示させて、Axes, Grids, Curveメニューを選ぶ.Gridsの右の■をクリックして色と線の種類を指定する.X axis, Y axisにチェックを入れるとマス目状にグリッドが引かれる.

グリッドの間隔や、軸の刻みなどは自動で文字が見えやすくなるように設定される.特に変えたいときや、おかしくなった時は、Tick settings を開き一旦FixedSettingsにして適切に表示させてから、automaticallyに戻す.

Automation Actionsを設定してから、レイアウトファイルを名前をつけて保存しておくと良い.

拡大図は別のページに描いた方が見やすいことが多い.Plot Limitで書き出し範囲を設定して別のPDFファイルへ保存する.もしも同じページに描くときは、プロトンと同じやり方で作成できる.

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