NMR生データを手に入れたら〜導入編

このページは、本学部装置のユーザー向けに作製したTopSpin導入マニュアル(私家版)をWeb化したものです.

測定と同じソフトウエアTopSpinをアカデミックフリーでデータ処理に使えます. Windows,Mac,Linux版があります.フーリエ変換した結果をそのまま開くことができるほか,NMR測定の際に読み込まれたデータ処理パラメータが引き継がれるため、データの再処理が容易に行えます.また,ほかの機種で測定したデータも扱うことができ,それを二次元スペクトルのプロジェクションとして貼り付けることもできます.

ソフトのダウンロード

※ バージョンやディレクトリ構成などが変更になる可能性があります.

  1. ブルカーのサイト(https://www.bruker.com/)で、登録者限定エリアにアクセスするためのアカウントを登録する.
  2. 登録完了のお知らせが来たら,上記ページからログインし、 Serice>Software Support & Upgrades>NMRとたどる.
  3. TopSpinにつづく希望のOSをクリックし,ダウンロード,インストールする.データ処理には最新版をお勧めする.若いバージョンのTopSpinで測定したデータを、以降のバージョンのTopSpinで開くことは問題ない.
  4. インストール後最初の起動でライセンス画面が出る.上記サイトでTOPSPIN Academia licenseをクリックし,指示に従ってライセンスキーを入手,ソフトウエアにセットする.

データフォルダの設定

ウインドウズ版では、パソコンのディレクトリ構造が下図左のようになっているとき,TopSpinでは右のように見える. インストールすると見本のデータが c:\Bruker\TopSpin[数字]\examdataにある.exam_CMCse_1が測定したときのファイル名(name)で、その下の1, 2....が実験番号(exp.no),その下のpdataの下の数字が処理番号(proc.no)である.このように、測定時のnameがフォルダ名となるため、nameにはフォルダ名に使えない文字は使わないようにし、紛らわしい記号も避けるようにする.『,』、『¥』、『.』、『-』、『空白』は避け、『_』にする.

測定したデータはexamdataの中に保存するか,別なフォルダを用意してもよい.次の例では、c:\nmrdataを用意して、その中に、測定時のnameが20an001などを保存している.この下層に1, 2....という実験番号(exp.no)のフォルダがすぐある.

TopSpinでDataが並んでいるフレームで右クリック→Add New Data Dirでデータを保存しているフォルダを指定すると認識される.

ソフトウエアは、階層構造と中にあるファイルでNMRデータを認識している.フォルダの中をフォルダに入れて整理するなどして階層の深さがまちまちになったり、必要なファイルを消したりすると、うまく認識できなくなる.いっぽう上記例のPDFファイルのように、あとからファイルを入れることはできる.

生データの構造

TopSpinソフトウエアは、階層構造と中にあるファイルでNMRデータを認識している. 下図は、測定時のnameがexam_CMCse_1である一連のデータで、その下のフォルダ1, 2....が実験番号(exp.no),その下のpdataの下の数字が処理番号(proc.no)である.

実験番号(exp.no)1はプロトンの一次元測定であり、...\exam_CMCse_1\1 の中には、

pdata   というフォルダ
fid   というファイル...これがNMRの生データFIDである.
その他ファイルがあるが変更を加えないこと.
が入っている.二次元の場合は、fid ではなく ser というファイルがある.

その下のpdataを開くと処理番号(proc.no)の数字のフォルダがある. ...\exam_CMCse_1\1\pdata\1の中には

1r   ※これがスペクトルデータ実部である.1iが虚部.
title  TopSpinのTitleタブの中身.
その他ファイルがあるが変更を加えないこと.
が入っている.二次元の場合は1rではなく2rrがスペクトル実部である.位相検波の場合は虚部のファイル2ii, 2ir, 2riがあり、絶対値測定の場合は虚部ファイルはない. 処理番号2以降は例えば、ウインドウを変えた結果を残したいときやスライスを切り出したりするときに使う.

TopSpinの基本操作

TopSpinの画面

ウインドウの一番上がメニューバーで、メニューを選ぶとその下にメニューバーの階層が変化する.メニューバーの階層の▼がある部分をクリックすると、種々の操作が表示され、さらに階層になっているものもある.ウインドウの3段目には操作アイコンが並んでいて、ここはカスタマイズすることができる.アイコンは をクリックすると増やしたり減らしたりできる. 操作ボタンアイコンの意味は、マウスカーソルを載せると表示される.

ファイルを開くと、ファイル表示領域がタブ形式となる.

メニューバーの右の?がマニュアルへのリンクである.

※TopSpin3まであったメニューバーのPublishはなくなり、書き出しはPlotタブを開いて行うようになった.

メニューバーの一番左:ファイルメニュー

  • Print:表示しているタブをそのまま印刷する.
  • Plot : ProcParsタブのレイアウトファイルとPlotタブのAutomation設定に従ってPlotタブ内を作成して印刷する(自動測定で印刷する設定にしているときと同じ挙動).
  • Export : 出力ファイル形式を拡張子で指定する.ピークテーブルや積分値リストはcsvで保存すると扱いやすい.
データを開く、複数のデータを開いて切り替える

下図のようなフレーム表示になっていないときは,ウインドウ右端の二行目のをクリックする. Dataの並んだフレームで+をクリックしてデータを探し、ProcNo上で右クリック→DisplayまたはDisplay in new windowとするとデータが開く.DataのフレームからドラッグするとDisplayと同じ動作になる.Display in new windowで複数のデータを開いたときはTopSpin右上の数字のあるアイコンをクリックしてデータを切り替える(サムネイル表示がおかしいことがある).複数のデータを並べて表示したいときは、をクリックして並べて表示する方法を選ぶことができる.

初期設定

アイコンや文字が小さくて見づらい場合,メニューバー右の をクリックして,All in One Fonts and Icon Sizeを設定する.

スペクトルタブでの基本操作

スペクトル表示領域で右クリック→Spectra Display Preferenceで表示する項目,色などを設定できる.データ処理の際、カール位置を常に表示にしておくと化学シフトが読みやすい.

メニューから階層を表示させた際に[.pp]などのように対応するコマンドが示されているものもある.ピークピックや積分モードなどのモードに入るコマンドはドットから始まる.コマンドはウインドウ下部左のコマンド入力領域に入力し,ENTERする. 

スペクトルの縦拡大・縮小は をクリック,または の上でマウスをドラッグ,または,スペクトルの上でマウスのホイールを回す.

横拡大は見たい範囲をドラッグ,または をクリック,または の上でドラッグする. で縮小する.

横および縦方向の移動は を使う.

で直前の表示, で全範囲に戻る.複数データを並べて表示している際に最後に表示範囲を変えたものに他のデータの範囲を合わせるには を使う.

フーリエ変換

フーリエ変換されていないとき,またはやり直したい場合,一次元の場合,コマンド入力ウインドウでef [ENTER]続いて apk[Enter]する.二次元は、xfb[ENTER]する.HMBCはさらにxf2m[ENTER]する.ウインドウ関数などは測定時に標準的なものが読み込まれているが,必要ならProcParsタブで設定する.

タイトル

タイトルはTITLEタブに入力し、で保存する.TopSpin4から保存が必要になった.

測定パラメータを見る

TopSpinでAcquParsタブを開くと、測定する際に設定したパラメータを見ることができる.右側に簡単な説明文が載っている.詳細は、TopSpinのメニューバーの?アイコン(ヘルプ)の中のManuals(doc)の、Acquisition Commands and Parametersに書かれている.

この表示画面では測定後に何か変更を加えたらその変更された値になっている.また、途中で止めた場合にどこまで測定したかなどはわからない.をクリックすると測定に使われたパラメータの表示になる.この元となっているのが、生データフォルダの...\name\ExpNoの中にある、acqu と acqus のファイルである.二次元の場合は、acqu2 と acqu2sも参照される.

分光器につながったPCではをクリックするか、コマンド入力でased[ENTER]すると、測定に使う項目だけを表示することができる.[A]のアイコンで元の表示に戻る.

自動測定のあと、または一度plotタブを開いたのちは、\name\ExpNo\pdata\ProcNoのフォルダの中に、param.txtというファイルが生成する.これは、パラメータ付きのレイアウトで書き出したときの、パラメータ部分の中身である.分光器に繋がっていないPCで測定に使ったパラメータだけを見たいときはこのファイルを生成させて見ると簡便である.

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