HMBCを高感度なパルスプログラムに変更します

(2015.7.1)

HMBC(heteronuclear multiple bond correlation)1)は2から3結合を介したプロトンとカーボンの相関法で、現在は通常は磁場勾配パルスを用いた測定2)を行っています。遠隔CHカップリングLRJCHの展開中にプロトンのカップリングJHHも展開すること、LRJCHをリフォーカスしないことから、絶対値スペクトルを取得します。いっぽう、位相検波のHMBC法3,4)が、LRJCHの測定を目的として用いられてきました。絶対値より位相検波の二次元スペクトルのほうが感度が高いことが知られていますが、位相検波のHMBCパルスプログラムにはカーボンの180度パルスが含まれており、これまでは良質に測定することは困難でした。カーボンは観測範囲が広く、パルスが中心から遠いシグナルを効率よく励起できないのですが、とくに180度パルスが不完全な場合は、90度パルスが不完全な場合に比べて、結果へのダメージが大きいためです。絶対値表示のHMBCはカーボン側に90度パルスしか使われていません。

このたび、広帯域のカーボン180度パルスの使用が可能になりましたので、HMBCの測定にはCiceroの方法に広帯域カーボンパルスと直結1JCH由来のピークを抑えるユニットを組み込んだもの5)を使い、測定後にF2方向を絶対値処理することとします。これにより、縦方向の線形がよくなるおかげで分解能が上がり、感度も向上します。

下図は、2mgのアルファ-サントニンのHMBCを積算回数8回、C/H-dualプローブで(a)この方法と(b)従来法で測定したものです。この程度の濃度ですと、今までは積算回数16回で2時間測定しており積算回数8回の(b)では十分な相関が得られていませんが、(a)では良い結果が得られていることがわかります。

1) A. Bax, M. F. Summers, J. Am. Chem. Soc., 108, 2093-(1986)
2) P. E. Hurd, B. K. John, J. Magn. Reson., 91, 648-653(1988)
3) A. Bax, D. MarionJ. Magn. Reson., 78, 186-191(1988)
4) D. O. Cicero, G. Barbato, R. Bazzo, J. Magn. Reson., 148, 209-213 (2001)
5) M. Findeisen, S. Berger, 50 and More Essentian NMR Experiment, Wiley-VCH (2013)


図.


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