adequateの測定を開始しました。

(2015.06.16)

ADEQUATE(J. Magn. Res., A118, 282 (1996))はプロトン観測のC-C相関法です。1H→13C→13C の磁化移動を検出するもので、INADEQUATE同様、分子内に二つ13Cが入っているアイソトポマー(1/10000)が観測対象になるため低感度ですが、プロトン観測としている分の感度増加があり、パルス系列全体で計算上10倍程度INADEQUATEより高感度になります。また、INADEQUATEは繰り返し時間を長く設定する必要がありますが、ADEQUATEはプロトン観測ですので繰り返し時間を長くする必要はありません。

1H→13Cの部分の介在結合数, 13C→13Cの部分の介在結合数を頭につけた、1,1-adequate, 1,n-adequate, n,1-adequate, n,n-adequateがありますが、LRJCHが小さいことからn,1-, n,n-は困難なことが多いです。1,1-, 1,n-では第四級炭素同士の相間は得られません。

図はクロトン酸イソブチル(114mg/CDCl3)の(a)1,1-ADEQUATE(ca. 1hr)と(b)INADEQUATE(ca 16h)の測定例です。横軸(F2)と添えてある一次元スペクトルは(a)はプロトン、(b)はカーボンです。縦軸は二つのカーボンの化学シフトの和です。たとえばC1とC2の相関ピークは、縦(F1)方向の位置はC1の化学シフト17.6ppmとC2の化学シフト144.0の和である161.6ppmの位置に、横(F2)方向の位置は、(a)ではH1とH2の位置に、(b)ではC1とC2の位置に出ます。C3とC4の相関ピークは(a)ではF2=H3の位置だけに出ます。両者とも、縦軸をカーボンの化学シフトとする測定法もありますが感度が落ちます。
カーボン化学シフト(ppm)相関シグナル位置(F1,ppm)
C117.6 C1/C2 161.6
C2144.0 C2/C3266.6
C3122.6 C3/C4288.8
C4166.2
C570.0 C5/C697.6
C627.6 C6/C7,846.4
C7,C818.8

図.クロトン酸イソブチル(114mg/CDCl3)の(a)1,1-ADEQUATE(ca. 1hr)と(b)INADEQUATE(ca 16h)


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