質量分析法は、分子をイオン化してできたイオンや、それが分解してできたイオンの質量をはかる手法であり、化合物の分子量や部分構造を知ることができる。
イオンの質量を測定する方法は何種類かあるが、主として用いられているのは、荷電粒子の進路が磁場中で曲げられる性質を利用しているものである。
分子をイオン化する方法は何種類もあり、現在も研究が続けられている。最も手軽で再現性も良く一般的なものは、分子に電子線を照射してイオン化する電子イオン化、EI(Electron ionization))註)である。
イオン化の際、分子に与えられたエネルギーがイオン化のエネルギーより多いと、その余剰のエネルギーでイオンが分解しより質量の小さいイオンが生成する。これをフラグメントという。
例としてbenzamideのEI-MSにおけるフラグメンテーションをを示す。
MSスペクトルはこれらのイオンを、横軸にm/z(質量/電価数)、縦軸にそれらの相対強度として表したものである。生じるイオンのほとんどすべては1価なので横軸は質量となる。フラグメンテーションの様式は何通りかあり再現性が高いので、質量スペクトルから化合物を同定したり、部分構造を推定したりすることができる。
例としてbenzamineのEI-MSスペクトルを示す。
略語 EI のフルネームは以前は electron impact, electron impact ionization, electron bombardment ionization (電子衝撃イオン化)と言われていたが、現在はIUPAC で electron ionization (電子イオン化)が推奨されている。 (現代化学増刊31「バイオロジカルマススペクトロメトリー」東京化学同人(1997))