緑の風・木枯らし07

OB/OGからの情報、速報などを随時掲載します。

071223 COP13の新情報

環境省のホームページには、バリ島会議に対する日本代表団の評価がでていました。是非、ご一読下さい。I名誉教授。
気候変動枠組条約第13回締約国会議COP13;

071013 日本から天然林が消える日

「日本から天然林が消える日」シンポの要約・・・I名誉教授レポート
10月5日に日本環境法律家連盟の年次総会が札幌市で開かれ,その一環として,「日本から天然林が消える日」のシンポが開かれました。私もまた儲かる林業論が主張されている今日,天然生林の保全と利用を考えることは重要と思い参加しました。

  1. 河野昭一氏(京大名誉教授)「森林からみた世界と日本列島の現状と緊急性」  報告内容は北海道新聞に掲載(平成19年10月5日)&ref(): File not found: "河野・石井メモ.pdf" at page "緑の風・木枯らし07";参照。講演内容自体は生態学者としての研究成果の主張とすれば,当然のように思う。なお,河野先生が主張されている国有林が管理している天然林の環境省移管論は紹介されなかった。
  2. 関根広道氏(弁護士)「やんばる訴訟」  「やんばる」の造林事業の実態をみていると,沖縄県は森林整備という名で,林道建設を行うとともに造林事業を行っている。「やんばるの森」から見えることは必要でない造林事業を公共事業ということで森林の破壊を行っている。もし「やんばるの森」の実態が全国にもいえるのであれば,林野庁は森林整備をいうことで森林を破壊しているのである。予算を大幅に減額する必要があると主張。
     この主張はすぐには全国には適用できないが,需要動向に関わりなく間伐を行い,その結果として木材価格を下落させ,それに木材資本が群がり,森林伐採が進むというメカニズムが我が国に存在するので,間伐の実行が必ずしも森林整備につながっていないという事実はある。
  3. 松田さん,鏡担氏(十勝自然協会)「大雪山国立公園で依然続く森林伐採」
    国立公園内といえども保護されている天然林は少ない。幌加地区では伐採が行われているが,木材生産というよりも,20ha以上の皆伐が行われており,森林を破壊している。ヘリコプターから国有林をみると,初春であるとはいえ,すけた林分が多く,また林道ー作業道ーブル道が至るところで走り,更新がうまくいっているようには見えなかった。
  4. 市川守広弁護士は,「道は森林づくり条例を制定し,森林を保全する」
    上記のようにと期待したが,期待したようなことを行っていない。現在,日本の天然林は絶滅の危機にあるにもかかわらず,林野庁は天然林を保護するということではなく,天然林の絶滅に追いやっている。そうしたことを林野庁だけではなく,沖縄県や道庁が加担していることが問題であるとした。
     シンポの全体を通じて,天然林(・天然生林)の保護の重要性が強調されていた。幾つかの誤解と事実認識の間違いがあるものの,林政を担当する者としては,こうした主張にも配慮し,このような主張がどうして出てくるのか,批判点を改めるにはどうしたら良いのか,などを考える必要があると思う。

070917 中国国務院発 休耕造林プロジェクト 増資?!

1999年から実施された退耕還林政策が8年目を迎えて,今後どうなるかが注目されているが,国務院は8月15日に補償を8年間延長することを決めたとのことです(&ref(): File not found: "中国国務院070908.pdf" at page "緑の風・木枯らし07";)。そのことが中国国務院HP上に掲載されている。そうした意味では,9月15日付けの道新報道{農地緑化を中止」の記事は間違いか?(関連して、9月初旬に行われたAPEC首脳会議の特別声明で「2020年までにAPEC域内の森林面積を2000万Ha増やす」という計画は,森林減少が続くAPEC域内の目標としては評価できる・・・関(拓殖大学))談(I名誉教授情報)

070915 中国、「退耕還林」政策を撤廃?!

現在の第11次5ヶ年計画で実施してきた農用地約130万haを森林などに戻す「退耕還林」を中止することを決めた。工業化のために不足する食糧を確保することが狙い。1999年に開始(Science 2000で紹介;講義でも資料を配付)、これまでに農地2430万haを林地へ戻した。自国の緑化技術を海外へ提供することで国際環境問題へ貢献したい、とか(北海道新聞より)(小池)。

070915 カラマツ人工林への期待

NHK北海道クローズアップ現代「カラマツ人気急上昇ー道産材ブームの光と影」を見て

  1. 住宅用にカラマツが使われるようになっており,カラマツ人気急上昇と言える。
  2. 十勝港から輸出されるカラマツは35万本で,3倍以上になっている。東京でもカラマツを使う住宅メーカーがでている。集成材を使っている
  3. その技術的背景として林産試験場が開発したカラマツに蒸気を吹き付けた上で乾燥するという技術があるカラマツ活用ハンドブック;北海道立林産試験場刊行(2005年)。その結果,割れないで乾燥できるようになった。
  4. ロシアの輸出規制の強化,カラマツがヒノキよりも20%安い等から住宅用に使われるようになったー合板ではなく,住宅用・集成材を強調しているのが特徴
  5. 一方,影の部分としては平成18年度,カラマツは伐採が4553ha,植林が3030haで,伐採放棄地が広がっている。豊頃町にはそうしたものが240haある。森林組合の中井参事の話ではこの1・2年でこうしたことが広がった。
  6. 業者が直接,森林所有者から購入することが多く,そうした場合には伐採が植林に繋がらない。
  7. 80歳の農家林家のNさんは12haを伐採したが,植林はしていない。長男は50歳であり,農家には再造林する力はない。森林組合の提示の再造林費は1年間210万円であり,個人負担が大きすぎるーこの数字も不正確。
  8. こうしたことについて道庁も危機感を持ち,対策を検討している。美幌森林組合では伐採放棄地を購入して造林するという試みをしている。
    NHKも含めて,森林・林業に関する関心が高まっているように思うが,行政,専門家は分かっていることは正確に伝えるとともに,分からないことは分からないとはっきり説明することが必要。今回の報道でも幾つか事実や統計で不正確な点や間違いがあったことが気になる。今後,温暖化防止に果たす森林の役割について,ますます関心が高まりますが, 「専門家」として正しい情報を提供することが求められている。(I名誉教授談)

070826 生物多様性情報

OGではありませんが、北大「演習林」ファンを自称して下さる堂本暁子さんからのメッセージです。
 彼女は北大林学OBの鳥山先生に生物学を学ばれたそうです。千葉知事にご就任前は世界の政治家を束ね、グローブ総裁をされ、「生物多様性」(岩波)について、数多くの著作を表されています。中米のコスタリカからのメッセイージです。
 「1949年の憲法で常備軍を廃止した国です。1998年に生物多様性法を制定し国の25%が国立公園などの自然保護区です。自然を守るだけではなく、自然資源を活用するためにも、生態系を保全することの重要性を国民に理解させようとしています。初めて熱帯林の中を歩き、また、ゴンドラに乗って上から見たりもしましたが、日本の自然とは全く違う世界です。シダなどの植物の葉の大きさや、背の高さに驚きました。なにしろ巨大なのです。
 熱帯林のなかに棲む鳥たちが、とても美しく目を見張りました。実は私は、サンショクヒムネオオハシという鳥にあこがれていたの ですが、しかし、この鳥には残念ながら出会うことはできませんでした。また、鮮やかなブルーの大型蝶のベレイデスモルフォや、 ブルーと黄色のヒメキヌバネドリという鳥やイグアナといった巨大な爬虫類にも出会いました。この国から学ぶことが多々あります。その意味でも、とても有意義な旅でした。」
※「堂本あき子のホームページ」で、堂本さんが撮影された写真をご覧いただけます。(小池、転写)

070825 森を守る・育てる・いかすー北海道森林管理局

北海道森林管理局・山田局長が「量で戦うか,価値で闘うか」という所信を述べられ,内容に注目。

  1. 全国的にみて,国産材は量で闘うか,質で闘うかの2つの路線はある。前者ではコストダウンを,後者では認証をとって闘う必要がある。
  2. 九州を見慣れた目で北海道をみると,人工林は九州では明確なエリアがあって,量的に集積されているが,北海道ではモザイク的である。そうしたことを考えると,天然生林を含めて,総合的な多目的な森林利用が必要となる。
  3. 紋別地区を中心に認証をとる動きがあるが,まだ量が足りない。網走の南部,中部を広げて規模拡大を行う必要があるが,とりあえず網走西部地域を一括して認証をとることを真剣に考える必要がある。
  4. 森林認証取得による林業・木材産業活性化を通じて,それを森林整備に結びつけることが重要である。

聞くところによると,

  1. 道有林は雄武,興部を中心に今年度中に認証をとるべく予算を獲得したとのこと,
  2. 国有林のシステム販売を網走地区を中心に今年度,行うことが決まり,すでに公表している。
  3. 恐らく,網走地区の国有林で認証をとる動きが今後,具体化されるであろう。
     このように,国有林,道有林をも巻き込んで,認証取得による林業活性化の動きが網走を中心に急速に具体化 しそうです。(I名誉教授談話)

070813 内閣府:森林と生活に関する世論調査

平成19年8月10日に公開された内閣府の森林に関する調査結果の要点紹介:

  1. 森林に期待する働きでは二酸化炭素吸収が54.2%,次いで国土保全が48.5%である。木材生産は14.8%であること。この割合は国有林に期待する役割もほぼ同じである。
  2. 森林整備のあり方は公益的機能を高めるようにすべきが74.6%,経済効率を考えるべきが17.1%である。
  3. 森林の整備に関わる費用負担については様々な意見がある。
  4. 地球温暖化防止に関わる森林整備の主体については国や地方公共団体が主体となって行うが79.6%を占め、さらに国民の参加と協力が必要とする意見が52.5%である。
  5. 地球温暖化防止に関わる費用負担については企業や国民が負担するが54.8%,国民全体で負担するが54.1%である。(I名誉教授分析)

070728 木材資源管理の動向

道森林管理局に人工林資源管理対策プロジェクトチームが6月に発足し,次年度の施策に反映される方向。

  1. 平成18年に提示された森林林業基本法と森林・林業基本計画の内容と方向は「環境重視時代の林業・木材産業の方向性」を示していると言える。
  2. 北海道のカラマツ,トドマツの資源への期待が高まっていることに関わって,7月24日に開かれた木質構造研究会での銘建会社のS氏の発言,「欧州材のラミナーを使って集成材を生産するモデルは輸入材価格の上昇により完全に再考慮しなければならない。」。国産材産地としては北海道,山梨,青森などが注目され,合板需要が高まっているものの,まだ北海道には余力があると考えられている。しかし、依然としてチップ国内価格が低迷。
  3. 補助金なしで再造林を確保しようとすることを検討するのは良いものの,その実現は難しいこと,一方で現行の補助金方式では造林コスト削減のインセンテイブが働かないので,造林補助金の方式を見直す必要があることについては一定の合意を得ることができた。~(I名誉教授談)

070704 北方林業 編集後記から

緑を増やす事は「善」であり、荒廃地に緑に回復することを私どもは目標としてきたはずである。昭和30(1955)年に刊行された「育林学新説」(中村教授還暦記念事業会 編)は、造林学のベストセラーと言われる。学生時代、この中にある「荒廃地造林」の章(門田正也著・名古屋大学名誉教授)を読み、この方針に感銘を受けた思いは今も変わらない。大気汚染物質の渦巻く中で、衰退し続ける森林の再生を願ったのは私一人ではない。しかし、平成18(2006)年1月、人気のある科学雑誌、Natureに驚くべき記事が掲載された(439巻187-191)。樹木からメタンが放出されていることが見つかったという。メタンは、温室効果ガスとして知られている二酸化炭素の約23倍の温室効果を持つと言う。大気中には二酸化炭素は約0.03%含まれているが、メタンは平均 0.00022%と推定されてきた。その量が僅かとはいえ、植林面積が増えることによってメタン放出源が増すことになれば、混乱の極地に陥ることになると思われる。これまで、湿地に生育できるヤチダモに顕著であるが、イネと同様に地上部から空気を運ぶことのできる通気組織(エアレンチマ)が発達しており、エアレンチマを通じてメタンが運び出されていることは、北海道立林業試験場によって指摘された。しかし、好気的条件下での樹木によるメタン発生は驚異であり、森林総合研究所が本州の代表的な樹種を用いて直ちに追試した。さらに、平成18年夏には学術振興会特別研究員のKさんが、高CO2環境で育成された北海道の代表的樹種3種を対象として調査した結果、やはり、メタンの放出が確認された。どの様な条件で、この樹木からの好気的メタン発生が加速されるのか、調査を急がねばならない。従来、森林土壌はメタンの吸収源であると考えられてきた。しかし予期しなかった樹木からの好気的メタン放出は、そのメカニズムの解明を通じて、その抑制対策が待たれる。荒廃地造林を目標にしてきたが、その根底が揺らぐ思いでいる。(小池)

070629 「昆虫記のファーブルの肉筆・・・新島善直・縁」 宮本敏澄氏発掘

北大博物館にて日仏交流の一環として、「ファーブル昆虫記」のファーブル関連の展示がされます(7月1日〜9月17日展示予定)。その中に、造林学研究室・「開祖」・新島善直教授(1871〜1943)が入手されたファーブルの肉筆付きの古書も展示される。OB宮本敏澄(現・資源生物)さんが発見。造林から博物館に貸し出し中です(記事は道新6月29日)。新島先生は、造林学だけではなく、森林保護学(特に穿孔虫の研究)、応用鳥学、熱帯造林学、森林美学なども講じられた。修論・卒論で関連の深い黒松内ブナ林の保護を行ったことでも有名です。黒松内町の刊行による「北のヤシの木」(新島先生の足跡)のタイトルは、新島先生が、ブナの樹型見て、「ヤシの木」のようだ、と言われた事に由来する。紹介する肖像も同本からの転載。(黒松内町)。 &ref(): File not found: "新島先生肖像.jpg" at page "緑の風・木枯らし07";:

070627 OB 渡邉定元氏、大いに語る

渡邉定元先生大いに語る(日本森林学会・森林施業研究会元顧問)。「水と森林・樹木と人びと」ー日本の水法と森林の関わりー 日本河川協会刊行 「河川文化」24巻にて、貴重な指摘を! 文科省の大きなプロジェクトは、大都市周辺の水資源管理に関わる内容が多い。砂防学の東三郎名誉教授によるかつての試算によると、札幌市の水瓶とされる豊平峡ダムは180万人の渇きを潤すことができるとか。しかし、既に人口は190万人に。

070623 緑資源機構の解体

道新6月25日の4面で緑資源公団の廃止との関係で国有林のあり方に関わる報道が初めてでていることが注目されます。1)緑資源公団は2007年度限りで廃止、2)大規模林道は都道府県に2008年度から移管、3)森公弘済会と林業土木コンサルタンツは設立許可を取り消す、4)緑資源公団が行ってきた水源林を対象とする植林部門は将来的に,林野庁から国有林整備部門を引き継いで,2010度中に設立する新たな独立行政法人が継続して実施する,という内容です。  今の情勢では緑資源公団の廃止は必至でしょうが,予想通りに国有林の合理化の受け皿と緑資源の植林部門が結びつきました。今後,色々な動きがあるでしょうが,こういう方向で基本的には進むでしょう。林野庁はさらに天下り人事の規制策をださねばならず,また談合を防ぐための入札方式の改善を余儀なくされるでしょう。(I名誉教授)

070623 道庁の林務系の将来を占う

苫小牧研究林へ、今上天皇ご夫妻も訪問され、北大研究林に注目が集まりました。さて、その植樹祭の際の高橋知事の挨拶で,北海道森林づくり条例について述べ,道民との協働で森林整備を行うことの重要性,地球温暖化防止,土砂害防止における森林の役割を強調されていました。これに来年のサミットを考慮すると,道庁では一層,森林整備の推進が強調されることは間違いのないことかと思います。木材生産は資源管理,森林整備上の必要性との関係で今後強調させることになるでしょう。(I名誉教授)道立林試では、グリーム(Green+Dreamの造語−千島列島産のグイマツを母親、ニホンカラマツを父親とする雑種F1。現在は「挿し木」で増殖)に期待, (道立林試の広報「北の森の達人」を参照。

070601 道庁の人事(関係分抜粋)

岡本光昭(57)−十勝支庁長,林学48卒(新規採用では精神的にもお世話になりました。OBは本当に有り難いと痛感しました。)野呂田隆志ー林務局長,林産53卒、荒川剛ー環境局長,林学53卒、浅井定美ー林産試験場長,林学49年卒、高藤満ー林業試験場長、真山良ー空知森づくりセンター長,林学51年卒

070523 道庁、森林環境税を検討中

日経の5月23日付けの報道によれば,道北市町村長との懇談において,高橋知事は道の独自財源として,森林環境税を導入し,森林の整備に当る構想を披露したとのことである。サミットとの関係で森林環境税の創設を知事に働きかけるといっていました。知事が賛成するかどうかが最大の問題であるとも言っていました。北海道の林業にとって,天然生林・人工林を含めて予算を確保して森林整備に当ることはもっとも重要な課題です。IPCCの報告,また北海道洞爺湖サミットの開催を踏まえて,もし創設が出来れば,非常に良いことであると思います。(I名誉教授)

070315 新刊案内

3月15日に出版された「主張する森林施業論ー22世紀を展望する森林管理」日本林業調査会」公務員試験の2次試験対策になるでしょう。森林総研の鈴木和次郎・大住克彦さんらが中心になって活動してきた森林施業研究会が「顧問」として活動されてきた渡邉定元先生(北大林産学科卒業・林野庁、東大演習林長、三重大生物資源、立正大環境科学と歴任されました)の退職を記念して出版した、とある。「100年の森林づくり」に向けた最新の技術と理論が1冊に! 現場に密着した10年間の研究成果を集大成したと森林施業研究会は、HP状で紹介している。


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最終更新日: 2008-03-26 15:38:49 (水)
緑の風・木枯らし07