Hokkaido UniversityThe Sonoyama Lab
北海道大学大学院生命科学院消化管生理学研究室
北海道大学農学部生物機能化学科食品機能化学講座(園山グループ)


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腸 内細菌叢が宿主のエネルギー・脂質代謝におよぼす影響の解析およびプロバイオティクスを用いた肥満・メタボリックシンドロームの予防・改善
 肥満およびそれに関連した糖尿病などのメタボリックシンドロームの増加は世界的な問題となっています。最近の研究により、腸内細菌叢がこ れらの疾患に関与する環境要因のひとつであることが明らかになってきました(総説: 園山 2010 腸内細菌学雑誌)。無菌マウスを用いた研究は、腸内細菌が宿主における食餌からのエネルギー獲得および脂質・エネルギー代 謝に影響することにより体脂肪蓄積に重要な役割を果たしていることを示唆しました。また、肥満個体と正常体重個体との間で腸内細菌叢が異なることが、実験 動物およびヒトにおいて報告されました。さらに、腸内のグラム陰性細菌由来のリポ多糖が体内に移行して代謝性エンドトキシン血症を生じ、それが白色脂肪組 織における軽度炎症、さらには全身性のインスリン抵抗性に寄与することが示されました。これらの知見は腸内細菌叢が肥満およびメタボリックシンドロームの 予防・治療の標的となりうることを示唆しています。実際、プレバイオティクスおよびプロバイオティクスがこれらの疾患を予防・改善することが報告されてい ます。私たちの研究室でも、植物性発酵食品製造時に用いられる乳酸菌株のひとつLactobacillus plantarum No. 14(桃屋研究所より供与)を食餌誘導性肥満マウスに経口投与すると、白色脂肪細胞のサイズ増加が抑えられることを観察しました(Takemura et al. 2010 Exp Biol Med)。桃屋研 究所の長田らは、正常体重被験者を用いた小規模な偽薬対照二重盲験介入試験において、L. plantarum No. 14株の3週間の投与が体脂肪率を低下させることを報告しています(長田ら、日本食 品科学工学会誌 2008; 55: 625-631)。私たちは、本菌株の菌体成分が腸粘膜免疫を介して体脂肪蓄積を制御するメカニズム を想定し、それを明らかにするための研究を続けています。
adipocyte

 このようなプロバイオティクスは、その生理作用を発揮するためには消化管内に一定数以上存在する必要があります。私たちは、プロバイオティクスの消化管 における生存に対して食餌がどのような影響をおよぼすか検討し、高脂肪食は経口投与したL. plantarum No. 14株の消化管内における生存を低下させること、さらにイヌリン(難消化性多糖類であるフラクタンの一種)を同時に摂取することによってその低下を抑えら れることを示しました(Takemura et al. 2009 Biosci Biotechnol Biochem、Takemura et al. 2010 J Nutr)。つまり、健康を増進 するためにプロバイオティクスを摂取するときには、同時に食生活にも注意する必要があるのです。