The
Sonoyama
Lab
北海道大学大学院生命科学院消化管生理学研究室
北海道大学農学部生物機能化学科食品機能化学講座(園山グループ)
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冬
眠動物における腸内細菌叢と腸管粘膜バリア・腸管粘膜免疫の関係の解析
一部の哺乳類は、冬期間に活動を停止し、体温・心拍数・呼吸数・代謝速度を低下させる冬眠を行います。これらの動物のほとんどは冬眠中に
持続的冬眠と中途覚醒を交互に繰り返します。例えばゴールデンハムスターは体温を環境温度より若干高い温度(約5℃)まで低下させ、80〜100時間の持
続的冬眠と12〜24時間の中途覚醒を約5ヶ月間繰り返し、中途覚醒時には摂食・排泄を行います。クマ類では例外的に、6ヶ月以上も冬眠が持続し、摂食・
排泄をまったく行わず、体温はあまり低下しません。このような冬眠動物の消化管にも、非冬眠動物と同じく腸内細菌が生息しており、宿主との共生関係を構築
しています。
非冬眠動物は、経口的な栄養摂取を長期間行わないと腸管粘膜の萎縮が生じてバリア機能が低下します。その結果、腸内細菌が腸管粘膜から体内へ侵入し
(bacterial
translocation)、全身性に播種すると敗血症に至ります。つまり、長期絶食によって腸内細菌による日和見感染が生じる可能性が高まるのです。
ところが冬眠動物では、自発的な長期絶食が行われるにもかかわらず、bacterial
translocationの機会が増加して生存の危機が高まるという証拠はありません。つまり、長期間の絶食を行う冬眠動物には、消化管内の細菌叢を制
御し、日和見感染を防ぐ未知の腸管粘膜バリア機構が存在するはずです。しかしながら、冬眠動物の腸内細菌叢および腸管粘膜バリアについては、これまでまっ
たく調べられてきませんでした。
私たちの研究室では、ゴールデンハムスターを冬眠動物のモデルとして用い、活動期の自由摂食個体、絶食個体、および冬眠個体の腸内細菌叢の構成と代謝活
性が異なることを明らかにしました(Sonoyama et al. 2009 Appl Environ Microbiol)。
現在は、冬眠個体の腸粘膜上皮の構造と機能がどのように変化しているのかを調べています。
また、飼育下のニホンツキノワグマを用いた研究も行っています。活動期および冬眠期の個体に麻酔をほどこし、肛門から内視鏡を挿入して消化管粘膜のよう
すを観察するとともに、粘膜組織を採取してさまざまな解析をしているところです。