The
Sonoyama
Lab
北海道大学大学院生命科学院消化管生理学研究室
北海道大学農学部生物機能化学科食品機能化学講座(園山グループ)
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ア
レルギー増悪因子としての消化管内カンジダ菌定着の解析および食餌によるその制御を介したアレルギーの予防・改善
カンジダ菌(Candida albicans)
はヒトの粘膜面に常在する日和見感染真菌です。この菌がアトピー性皮膚炎の発症・増悪に関与すると言われていますが、臨床上の経験的な知見によるところが
大きく、十分な証拠はありません。私たちはこのことを解析するために、消化管粘膜にC.
albicansが長期間定着するモデルマウスを作成しました(Yamaguchi
et al.2005 J
Nutr)。このモデルにおいて本菌は不顕性に定着しており、免疫抑制剤の投与により重篤な深在性真菌症に移行するので、ヒ
トの状態を良く模倣しているということができます。このマウスにモデルアレルゲンとして卵白アルブミン(OVA)を隔日に9週間経口投与し、血清抗体価の
推移を見たところ、C. albicansが定着していない対照動
物に比してOVA特異的IgGおよびIgEともに有意な高値を示しました(Yamaguchi
et al. 2006 Gut)。このことは、C. albicansの消化管定着が経口抗原に対する感作を促進することを
示唆します。また、C. albicansが消化管に定着したマウ
スでは消化管における粘膜透過性が亢進してタンパク抗原の吸収が増加しており、このことに肥満細胞が関与することを肥満細胞欠損マウス(c-kit変異マ
ウス)を用いた実験などで示しました(Yamaguchi et al. 2006 Gut)。さらに私たちは、OVAを
抗原としたアレルギー性下痢症、2,4-ジニトロフルオロベンゼンをハプテンに用いた接触過敏症、およびコラーゲン誘発関節炎(自己免疫疾患である関節リ
ウマチの動物モデル)の各モデルを用い、対照マウスに比してC.
albicans定着マウスにおいてそれぞれの症状が増悪することを観察しました(Sonoyama et al. 2010 Med Mycol)。これらの結果
は、消化管におけるC. albicansの定着がアレルギー発症
の危険因子であると同時にアレルギーや自己免疫疾患における炎症の増悪因子であることを示唆します。言い換えれば、C. albicansはこれらの疾患の予防・改善のための標的のひとつとな
りうるのです。消化管内の常在細菌がC. albicansの定
着・増殖の制御に大きな役割を果たしていることがわかっているので、プロバイオティクスやプレバイオティクスを用いてC. albicansを除菌する方策が考えられます。実際に私たちは、フラ
クトオリゴ糖の摂取によってマウスの結腸に定着したC. albicansを
除菌できることを観察しました(Miki et al. 2009 Dyn Biochem Proc
Biotechnol Mol Biol)。私たちは現在、消化管におけるC. albicansの定着が免疫応答や炎症反応を左右するメカニズムを追
究しています。今後は、ヒトにおいてもC. albicansがア
レルギーのリスクファクターとなるか否かを明らかにするための臨床研究も必要でしょう。