北海道三笠市幾春別川流域での研究
土壌を介した様々なエネルギーや物質の循環は水循環を介して長・中・短期的に形態を変え移動していきます。そのため、一つの大きな物質循環を捕らえるには水文学的な単位を対象とするのが合理的であり、本研究では石狩川水系の幾春別川流域を対象とした主に窒素の循環に関連した研究を進めています。
土壌学研究室では1990年代より幾春別川流域の三笠市において様々な土地利用(水田、タマネギ畑、コムギ畑、大豆畑、野菜畑、採草地)における窒素・炭素循環や温室効果ガス収支に関する研究が行われてきました(Hayashi and Hatano 1999; Hu et al. 2001; Sawamoto et al. 2002; Mu et al. 2005; Toma et al. 2007; Kusa et al. 2008)。さらに、それらのデータを用いた流域の環境負荷と土地利用との関係(2000年代)(Kimura et al. 2007)、広域的な土壌炭素の変動(2010年代)(Li et al. 2015; Li et al. 2016)を実施してきました。
幾春別川中流域の達布山展望台からの眺望
これらの蓄積データを活用し、幾春別川流域の窒素負荷の時空間変動を水文流失モデルであるSoil and Water Assessment Tool (SWAT) を用いて算出し、地形や土壌タイプを反映した地域的な窒素負荷の偏りとその影響の解明に取り組んでいます。
幾春別川流域の推定窒素負荷量(kgN/yr/Area)の例
流域の窒素負荷は土地利用(栽培作物)の構成や栽培管理等にも大きく影響を受けます。そのため、それぞれの土地利用毎の窒素負荷量をSWATで求め、それらの負荷を消費者の活動を基準に定量化した指標であるN Footprintを用い、食料生産過程における窒素の負荷と地形および今後の気候変動に伴う窒素負荷の予測に関する研究を実施しています。
幾春別川流域のある土地利用のN Footprintの一例
これらの研究により、河川流域においてより環境への窒素負荷の少ない土地利用構成や将来予測に基づいた適切な土地利用または農地管理方法の提案等を目指しています。