沿革

土壌学分野は、札幌農学校が東北帝国大学農科大学となった1907年に農芸化学第一講座として創設され、1964年土壌・肥料学講座と名称変更し、1967年その後継講座として発足した。この間第一講座および土壌・肥料学講座は三宅康次教授、石塚喜明教授が担当し、土壌学講座となってからは岡島秀夫教授、佐久間敏雄教授に引き継がれ、1995年より波多野隆介教授が担当した。1999年からは大学院重点化に伴い設置された環境資源学専攻地域環境学講座に属し、2019年の学院改組に伴って、農学専攻環境フロンティアコース地域環境学ユニットに所属が変わり、現在に至っている。

三宅教授の時代にはケイ酸とアルミニウムの作物生育への影響が論じられ、石塚教授の時代には水耕栽培法が確立され、イネの栄養生理学的研究を数多く実施し、作物栄養学講座創設の根幹を作った。また冷温帯土壌の生成的特徴に基づき、開拓地土壌調査を指揮され、土質改善学講座の創設に結び付けた。土壌学講座となった岡島教授の時代には、植物と土壌の接点となる土壌溶液を中心に研究を展開した。土地利用と土壌溶液濃度組成の関係、土壌溶液濃度組成と固液平衡の関係、溶存イオンの植物根への移動過程の研究に基づいて土壌肥沃度が論じられた。引き続き佐久間教授の時代にはその数値モデル化に関する研究、硝酸溶脱、河川流出に関する研究、酸性降下物や地球温暖化と土壌生態系の相互作用に関する研究に着手した。それらの研究は現在ますます高度に進められ、土壌生態系における物質循環に関する研究へと統合され、北海道内のさまざまな農林生態系複合流域におけるモニタリングとその精緻化、モデル化に関する研究へと発展している。さらに東ユーラシア、東南アジアとくに中国、シベリア、インドネシア、マレーシアにおいて、とくに窒素循環、炭素循環、温室効果ガス発生に関する研究が進められている。

これらの研究の多くは学内外の共同研究により進められている。環境資源学講座内および北海道大学北方生物圏フィールドセンターとの連携はもとより、地球環境科学研究院、水産科学研究院、北ユーラシア・太平洋地域研究センターなどの他研究科、および九州大学、名古屋大学、静岡大学、京都大学、京都府立大学、東京大学、東京農工大学、東北大学などの他大学、農業環境技術研究所、北海道農業研究センター、北海道立農業試験場などの国公立研究機関、NTT環境エネルギー研究所などの民間研究機関、インドネシアのボゴール大学、パランカラヤ大学、マレーシアの農業土壌局、中国の西南農業大学、華中農業大学、南京土壌研究所、ロシアの凍土生物研究所とも連携がとられている。

学部において担当する授業科目は、土壌および作物栄養学概論、土壌学 I、土壌学 II、実験計画法、物理化学および生物機能化学実験 I、地学概論である。獣医学部では土壌学を、全学教育ではフィールド科学のすすめを共同講義している。大学院では、農学院共通科目として温暖化影響論を、地域環境学分野として地域環境学や地域環境学特論を集中講義により開講している。毎週の原著論文ゼミナールのほか、大学院学生は土壌保全学分野との共同で研究ゼミナールを開催し、各々の研究を切り口に関連分野の知見を深め合っている。

主な学会は日本土壌肥料学会であり、主要研究成果は英文ではSoil Science and Plant Nutrition、和文では土壌肥料学雑誌に掲載されている。