渡部賢二氏日本化学会技術有功賞受賞

渡部賢二氏が「難イオン化化合物の質量分析法の開発と応用」で平成12年度日本化学会の第19回技術有功賞を受賞し、平成13年3月29日に年会会場である甲南大学岡本キャンパス(神戸)にて授賞式が行われました。

授賞式

業績の概要は以下の通りです。

たて渡部賢二氏は昭和46年から現在に至るまで北海道大学農学部・同大学院農学研究科において質量分析業務に携わり、化合物を扱う際の基本となる分子量の決定に大きく貢献し、多くの研究をささえてきました。特にFD-MS(電界脱離イオン化質量分析法)に造詣が深く、良好なFD-MSスペクトルを得るためのエミッターを作成する技術を確立し、信頼性の高いデータを安定して提供しています。また、これによりイオンの安定性や透過度の問題から通常は行われていないミリマス測定も可能となり、分子式の推定が行えるようになりました。さらに、測定法の工夫により従来FD-MSで測定不可能とされていたビタミンB12のような錯体や熱分解性化合物、分子内に電荷を持つ化合物の測定、金属塩の混入した系でのFD-MS測定を可能にしています。また、分子量が数千を超す場合FD-MSの測定は困難であるため、一般には高質量測定に有利だが極性の官能基をもたない化合物のイオン化は困難とされるESI法を応用し低極性高分子、たとえば分子量3000を越す金属ポルフィリンオリゴマーなどのイオン化に最適な溶媒系を検討し、これまで質量分析法以外の手法による大まかな分子量推定しか行えなかった化合物群の精密質量分析を可能にしました。

業績の詳細は日本化学会「化学と工業」第54巻第3号261ページ(2001)に掲載されています。


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