フラボノイドは配糖体で存在するものも多くあります.配糖体はEI-MSでは通常気化する前に分解してしまいますので,FAB-MSで測定します.分子関連イオンとしては,正イオンモードでは,プロトン化分子[M+H]+,ナトリウムイオン付加分子 [M+Na]+,カリウムイオン付加分子 [M+K]+が,負イオンモードでは脱プロトン化分子[M-H]-が得られます.両イオンモードとも,糖が順次外れたフラグメントイオンが検出され,グルコースなどのヘキソースであれば[M+H-162]+, [M-H-162]-, ラムノースなどのデオキシ糖であれば,[M+1-146]+, [M-H-146]-,が観測されます.(ほかに,マトリクスのピークも出ます.)ケルセチンの配糖体である,ルチンのFAB-MSスペクトルは以下のようになります. EI-MSで測定し,充分に温度を上げれば,アグリコンのスペクトルが得られることもあります.
グルコースなどのアルドヘキソース(C6H12O6 : 180)がアグリコンの水酸基とO-グリコシド結合したものは分子量がアグリコンより162多くなります(分子式でC6H10O5).ラムノースなどのデオキシヘキソース(C6H12O5 : 164)では分子量はアグリコンより146多くなります.分岐糖アピオースやウロン酸であるグルクロン酸も見られます.
アグリコンのどこに糖が結合しているか,また複数の糖がある場合,糖がアグリコンの二箇所に結合しているのか,あるいは糖が鎖状に結合しているのか,あるいは分岐しているのかといった,アグリコンと糖ユニットの並び方や,糖がαかβかといったことは,NMRで調べます.スペクトルを読もうの配糖体の構造解析にナリンギンの例を載せてあります.
7位に糖が結合したものが多い.
3位,および3,7位に糖が結合したものが多い.