「ぶんせきの友」FAQ & Tips GC-MS & NMR Lab.

微量試料管の使用

NMR信号強度は溶液の濃度に依存しますので、同じ試料量なら溶媒が少ないほど強度が高くなります。このため,細いプローブで液量を減らす(濃縮する)のが有効です.当測定室では1.7mmφのTXIプローブが使えます.このプローブ用のサンプルチューブは専用のもので,液量は0.04mlです.プロトンコイルが内巻きで,COSY,NOESY,HSQC,HMBCなどプロトン観測の二次元の感度を非常に高めることができるほか,カーボンも感度が上がります.

また,5oφの通常プローブで,シゲミのミクロ試料管を使うのも有効です.このチューブはNMR観測コイルの部分にだけ試料溶液を入れるようにし、その上下のシムコイルの部分にあたるガラスの磁化率を溶媒に近似してあります。このため試料溶液の深さは5mmφで1.2cm、2.5mmφで0.7cm程度で済みます。溶液の深さが深すぎると、サンプルが薄まってしまい、上げ底管を使うメリットがなくなるだけでなく、サンプルがこぼれる原因にもなります。購入の際は溶媒とNMRのメーカーを指定してください(当測定室の500MHzのNMRはブルカー製です)。

カーボンの一次元測定で1.7oφを用いても不十分な場合,2.5mmφのdualプローブでシゲミの上げ底管(0.06ml)を使うと改善が期待できます.シゲミチューブの型番,サンプル調整方法は、試料管・溶媒などの項目からシゲミのサイトをご覧ください.

当施設での選択の目安

以上まとめると

  1. 量が十分ある場合、5mmφの通常の試料管
  2. もっと濃度を上げたい場合、1.7mmφの試料管
  3. 上記でカーボンを測定するには薄かった場合、2.5mmφのシゲミ管

1.7mmφ試料管での試料調製法

※液量についてご指摘があり加筆・修正しました.
用意するもの
試料管,試料管の栓(ボール),小型のサンプルビン(5mmf, 5cm長さ程度)またはエッペン1本,シリンジ,または先の細いチップをつけたピペッター,アンプル入りの高純度な重水素加溶媒,つまようじ.
1.7mm tube and cap 1.7mm tube and cap

調製方法
  1. 今あるNMR試料を小型のサンプルビン(5mmf, 5cm長さ程度)またはエッペンに回収し、濃縮します。
    NMRチューブ内を同じ重水素化溶媒(ビン入りので結構です)ですすぎ、その液もあわせて濃縮します。何度か繰り返し完全に回収したら、溶媒を良く飛ばし、通常どおりポンプで乾燥させます。
  2. 試料の入ったサンプルビンにアンプル入りの高純度な重水素化溶媒 40マイクロリットルを入れ均一にかくはんします.NMRチューブに入れたらかくはんすることはできません.
  3. シリンジ,または先の細いチップをつけたピペッター試料溶液を試料管に入れます.シリンジの先またはピペッターチップの先がNMRチューブのガラスごしに見える状態まで挿入してから,液を入れます.
    1.7mm tube and cap
  4. 試料管の底まで達していなければ,手回し遠心または手で振って,底に集める.
  5. 試料管の栓となるボールを乗せ,手で軽く押す.
  6. 栓をつまようじで押し込む
    1.7mm tube and cap
  7. 折れないようにストローに入れ,氏名等を書いた旗をつける.
    1.7mm tube and cap 1.7mm tube and cap
  8. 試料管の上部にはシリアルナンバーが印字されています.試料がわからなくなるのを防止するため,書き留めておくと良いでしょう.
  9. この量の体積は測るのが難しいと思いますが、液の深さで見てください.最適な深さは2.6〜3.2cmです.これより多くても測定はできますが、濃度を損してしまいます.次回の調製時に溶媒を加減してみてください.少なすぎると分解能調整や測定が困難になります.

シゲミ試料管での試料調製法

用意するもの
シゲミミクロ試料管1組、小型のサンプルビン(5mmf, 5cm長さ程度)1本、パスツールピペット2本、シャーレ、アンプル入りの高純度な重水素加溶媒、パラフィルム5mm四方。
調製方法
  1. 今あるNMR試料を小型のサンプルビン(5mmf, 5cm長さ程度)に回収し、濃縮します。
    NMRチューブ内を同じ重水素化溶媒(ビン入りので結構です)ですすぎ、その液もあわせて濃縮します。何度か繰り返し完全に回収したら、溶媒を良く飛ばし、通常どおりポンプで乾燥させます。
  2. 試料の入ったサンプルビンにアンプル入りの高純度な重水素化溶媒少量を入れ溶解させます。
  3. 器壁につかないように、試料溶液をミクロ試料管外管に入れます。
  4. 上の2ステップを繰り返します。液の深さは5mmφで1.5cm、2.5mmφで1.0cmを超えてはなりません。中管の細くなっている部分に溶液が入りきらなくなり、こぼれる原因となります。溶媒は余ります。
  5. 内管を静かに挿入します。斜めに押し込むと外管が割れてサンプルがこぼれます。万一に備えきれいなシャーレの上などで作業します。
  6. 内管の底面が液に接したら気泡を追い出すように押し込みます。何度か抜き差しして溶液を均一にし、泡を取り除きます。
  7. 内管を引き上げ、その肩に1mm程度溶媒がかかるくらいの位置にします。
  8. 外管と内管の境目をパラフィルムで固定します。

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