ここでは、スペクトルを初めて手にした方が、実際にデータを読んで、構造の確認、未知化合物の構造推定に役立てることができるようになることを目標にしています。
機器分析による構造解析の教科書はたくさんありますが、まず最初に、もっとも基本的な事柄を有機化学の教科書で学ぶのが良いでしょう。大学の学部で使うような厚めのものなら機器分析の章に、EI-MS、1H-NMR、13C-NMRについて書かれています。このページを書くにあたって私は、マクマリー「有機化学」の構造決定の章を参考にしました。有機化学の教科書を読んでから機器分析の教科書(たとえばSilversteinら「有機化合物のスペクトルによる構造決定法 第5版」東京化学同人)を読むと理解しやすいと思います。また、Silversteinに収録されている数値データが不足の場合、データ集として E.プレシュら「有機化合物スペクトルデータ集」講談社サイエンティフィクが一冊あると実際にスペクトルを解析する際に役立ちます。
多くの教科書では、スペクトルを掲載していても数値テーブルを載せてはいません。ここでは、行数が多くなってしまいますがテーブルも掲載しました。データを発表する際にはテーブルからケミカルシフトとカップリング定数を読みとって表にまとめる作業が必要ですが、そのやり方についても説明を加えました。
スペクトル解析は、「習うより慣れろ」です。本文には例題、演習を盛り込んでありますので、実際に手と頭を動かしてやってみてください。