* 城田徹央(しろたてつおう;SHIROTA,Tetsuoh) [#o0082680]
** 自己紹介 [#j8f4a0b6]
- 北海道大学 低温科学研究所 学術研究員

- 人・自然・地球共生プロジェクトの研究員として
 シベリアの炭素固定機能評価に携わっています。

** 関心と研究テーマ [#g5d71f7e]
+森林の3次元空間構造とその推移
++樹木の相互作用による空間構造の自律形成
--避け合い,規則化
++樹木のかたちと生活史
--モジュール,パイプモデル,アーキテクチャモデル

** シベリアの調査地 [#ie909c1a]
+スパスカヤパッド研究林(ロシア連邦サハ共和国ヤクーツク近郊,N62E129)

--東シベリアの永久凍土が連続的に分布する地域です。
カラマツを主体とする「明るいタイガ」が形成されて
います。この明るさは林冠が落葉する針葉樹によって構成されていることだけでなく、
林冠そのものがうっぺいしないことに起因しています。
私たちはこの林分のLAIを2.2程度と推定しています。

--若いカラマツ林はほぼ同齢の純林またはシラカンバとの混交林を作ります。
シラカンバは寿命が短いので、いずれの場合も、カラマツの純林へと変遷します。
地表火によって一部の個体は間引かれ、そこでカラマツが集団更新するため、
成熟したカラマツ林は異齢林へと移り変わります。私たちが研究をしているスパスカヤパッド研究林は
このような成熟した異齢林です。


** グメリニカラマツの樹形づくり [#ie909c1a]
--成熟林の古いカラマツは200年から400年といわれます。最大樹高が20数
メートルと限定された高さであり、この高さには120年程度で達することができます。
ですから、年老いた林冠個体は樹冠を上部へ拡張しているわけではありません。
しかしそれでも直径が大きな個体ほど、たくさんの葉をつけるというアロメトリー関係が
見出されています。

--樹高成長が制約されたカラマツは、どうやって新しい葉をつけているので
しょうか?まずカラマツのシュートは短枝と長枝に分化しています。
私は大きな個体の大きな枝では短枝の割合が増える傾向を見出しました
(ただしサンプル数が少なかったので、このことはもう一度計測して確かめる予定です)。
短枝の割合を増やすことで、樹冠拡張から樹冠維持の生き方に方向転換できます。
同じ枝の上で短枝を連年更新していけば、樹冠の形を変えなくても一定の葉の量を維持できるということです。

--しかし、それだけでは葉を増やすことはできません。若い個体から年老いた個体まで、樹冠の形を比べていくと、
横広がりに樹冠が潰れてきていることがわかりました。樹高成長が限界に近づくとともに頂部支配がくずれた結果として、
横への成長が促進されてきたのでしょう。このように年とともに丸くなるカラマツ樹冠は、横へ横へと葉をつける空間を拡張することで、より多くの葉をつけることが可能にしています

--ただし、この横への拡張はとても緩慢としたものだと考えられます。なぜならば樹高が限界に近づくにつれて、
別の樹形づくりの変化、メタモーフォシス(metamorphosis)が生じるからです。若いころは幹が上を、枝が横を向いているのですが、
年をとってくると、枝も幹に成り代わるように上向きになってきます。光合成産物が幹よりも枝に回されるようになったとしても、枝自体は上を向こうとするために、樹冠の横広がりは急速には進行しないのです。

--カラマツは樹冠を横に広がる一方で、樹冠の内側にも新しい葉をつくっていました。もともと短枝として配置されていたシュートが、長枝へと変わり、新しい枝となっていくのです。短枝が長枝に成り代わる現象はシラカンバなどでも報告されています。植物形態学的には潜伏芽に由来する萌芽形成と類似した現象です。「長生きするパイオニア」であるアメリカのダグラスモミは萌芽によって樹冠を維持しつづけています。
同様のことがグメリニカラマツでも生じていて、カラマツの場合には「葉量の維持」だけではなく「葉量の増加」に寄与しているのです。

--老齢のグメリニカラマツは縦方向への樹冠拡張ができませんが、これを横への樹冠拡張に切り替えるとともに、樹冠の中に葉を詰め込んでいく樹形作りを行います。細長く背伸びしていた若いころと比べ、丸く中身の濃い樹冠づくりへと方向転換していくのです。この樹形づくりの移り変わりが、カラマツの長い寿命と森林の安定した維持につながっていくと考えられます。






** 連絡先 [#s9a44016]
- e-mail:shirota@for.agr.hokudai.ac.jp
- Tel:011-706-2523
- 部屋:N225(大部屋)


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