荒廃地の植生を支えるアーバスキュラー菌根菌
—火山性荒廃地:鹿児島県桜島— (2012)
桜島御岳(標高約1,000m)は日本で最も活発な火山の一つであり、昭和火口(上図の山頂右側)の日常的な噴火により、周囲には大量の火山灰が常に供給されている。特に火口付近に厚く堆積した火山灰は、風雨により容易に浸食されるため(下図)、山麓は常に泥流や土石流の危険にさらされている。
当研究室では(株)国土防災技術の協力のもと、林野庁からの許可を得て、桜島御岳の植生とアーバスキュラー菌根菌の種分布との関係について調査を開始した。
大正火口(休止中)付近の台地(標高540m)から見た昭和火口直下に存在する無数の浸食谷
桜島での植生限界高度は昭和火口からの距離に依存し、おおよそ標高600〜900mであり、特に高度の高い植生帯ではススキの優占度が極めて高い(上図)。
この付近のススキ植生を強化し、土壌浸食を少しでも抑制することが、本プロジェクトの最終的な目標であり、我々は、ススキと共にこの環境に適応しているアーバスキュラー菌根菌の種構成や適応機構の研究を通じて、菌根菌資材の活用と植生強化技術のための基礎的知見を得ようとしている。
ミヤマキリシマが咲く木本植物の分布限界付近(標高770m)を登る。クロマツやシャリンバイも点在するが、この辺りからススキの優占度が高まる。
標高850m付近でススキの根と土壌を採取。ラボに持ち帰り、土壌の化学性の分析と菌根菌の種構成についての分子解析を行う。
背後で起こった噴火をものともせずにポーズをとる工藤(左)と河原。君たちの双肩に掛かってるんですけど...