荒廃地の植生を支えるアーバスキュラー菌根菌
—火山性荒廃地:インドネシア・クラカタウ—
クラカタウはインドネシアのジャワ島とスマトラ島の間、スンダ海峡に位置する火山島です(上図)。元は一つの火山島(クラカタウ島,標高2,000m以上と推定)であったが、1883年の大噴火により島のほとんどが吹き飛び、周囲に3つの島が残ったものの、島の生物が全滅しただけでなく、津波などにより多くの人命が奪われ、地球環境全体にも影響が及んだ大災害であったと考えられている(http://www.nature.com/news/2008/080820/full/454930a.html)。
噴火で生じたカルデラの中心部では、1927年から再び噴火活動が始まり、アナック・クラカタウ(クラカタウの息子)が出現した(上図)。この島は、すべてが失われた熱帯生態系において、どのように生物が侵入・定着するのかを知るための生態学上の壮大な実験場となり、これまで植物学、動物学の観点から多くの研究が行われてきたが、微生物に関する研究例はほとんどない。
当研究室ではインドネシア林業省と国立科学研究機構 (LIPI) の協力のもと、アナック・クラカタウ島の植生とアーバスキュラー菌根菌の種分布との関係について調査を開始した。
アナック・クラカタウはジャワ島西部の最寄りの港町チャリタの西約50km(漁船レベルで4時間)に位置する。中腹に見える白い斑点は析出したイオウ(上図)。東側の砂浜に上陸し、ベースキャンプを設置した(下図)。
13名の研究者・アシスタントからなるキャラバンの野営場所。他に林業省のレンジャー数名も常駐している。
LIPIの研究者であり、‘King of Krakatau’と呼ばれている植物生態学者Tukirin Partomihardjo 博士(ベージュのベスト)の案内で植生を観察しながら登る。
ここにもいた! サンプリングを手伝ってくれたコロボックル。
アナック・クラカタウの東側ビーチでは、既に多様な植物が定着し、森林が形成されつつあるものの、標高50m付近から上に定着しているのは、この地方の典型的なパイオニアであるモクマオウ科の Casuarina equisetifolia,イネ科の Saccharum spontaneum(ワセオバナ),ノボタン科の Melastoma malabathricum に限られ(下図)、これらはすべてアーバスキュラー菌根を形成する。
標高80mから上はvolcanic desertと呼ばれる不毛地帯。
植生限界地点で S. spontaneum の根と周囲の土壌を採取。林業省の研究機関FORDAに持ち帰り、DNA抽出のための凍結乾燥処理とトラップカルチャーを行う。
昼食時にキャンプを訪れた大トカゲ。1.5mぐらいはありそう。鳥の卵やカニなどを食べているそうだ。泳いで他の島から渡って来たとしか説明できないという...
夕食の足しにしようと思ったんだが...