荒廃地の植生を支えるアーバスキュラー菌根菌
—超塩基性土壌:北海道様似町アポイ岳—
アポイ岳(標高約810m)は主にカンラン岩により構成されている山であり、この岩石の風化によって生じる土壌ー超塩基性土壌ーには、マグネシウムや鉄が多量に含まれると共に、ニッケルやクロムなどの有害な重金属も含まれる。そのため、植生の発達は全体に乏しいが、この土壌環境に高度に適応した---多くは「高山植物」と称される---特異で希少な植物種が分布している。-->日本ジオパークに指定され、植物や岩石の採取などが厳しく制限されている。
当研究室では北海道の許可を得て、アポイ岳の超塩基性土壌に自生するススキを対象として、高いマグネシウム含量(=低いカルシウム含量)や重金属に対する耐性とアーバスキュラー菌根菌との関係について調査を開始した。
アポイ岳5合目から望む太平洋
アポイ岳においても、やはり撹乱跡地(上図の場合、登山道の建設に伴う樹木の伐採や土地改変)ではススキが優占している。
超塩基性土壌に棲息するアーバスキュラー菌根菌は、特に重金属耐性が高いと予想されることから、鉱山跡地などの重金属汚染土壌の植生回復への応用が期待されると共に、希少植物の保護にも役立つ可能性がある。
浦河町の海岸からアポイ岳を望む
閉鎖された登山道沿いでススキの根と土壌を採取(クマ鈴は必携)。例によってラボに持ち帰り、土壌の化学性分析と菌根菌の種構成に関する分子解析を行う。
重要な情報として、アポイ岳のジオパークには様似町営の研究支援センターが併設されており、学生や研究者のサンプル採取や入山に関する許認可取得法のアドバイスが受けられると共に、安価な宿泊施設を提供している。ただし、毎晩?開かれている宴会には注意が必要(下図)。アポイエキスパートの皆様、暖かい歓迎と有益な情報、ありがとうございました!