液体窒素は気化に伴い体積がおよそ700倍になる.従って,閉鎖空間で液体窒素をこぼすと急激に気化して酸欠状態になる可能性がある.液体窒素を使用する場合は酸素濃度が18%未満にならないように,部屋の換気を十分に行うこと.やむお得ず換気の出来ない低温室等で使用する場合は持ち込む量を必要最低限とすること.
低温室への液体窒素の持ち込み量は500ml以下とする.万一,低温室内で液体窒素をこぼした場合は,直ちに退室すること.実験試料より生命の方が大事である.液体窒素は気化しても冷たいので当然床に滞留する.液体窒素とともに試料を床にこぼしても決して拾い集めてはいけない.
また,酸欠状態に陥ると眠気をもよおす.低温室内で液体窒素を使用中に眠気を感じた場合も直ちに実験を中止して退室すること.
上記のような事態が発生した場合は
ガス臭いので試しにライターをつけてみたら爆発した,といった類のバカらしい事故が以外と多いものである.もう大丈夫かと思って試しに入ってみたら倒れた,ということの無いようにされたい.何か起きたら安全のため事態を過大評価して対応すべきである.
●凍傷の危険性
液体窒素を扱うときはほとんどの人が軍手を着用すると思うが,軍手着用のみで十分だと考えるのは早計である.軍手をして長時間,液体窒素入りのビーカーを持っていると,軍手の表面は液体窒素の温度まで冷えている.そのような時に軍手の上から液体窒素をこぼすと,軍手の中に液体窒素が浸み込んでくることがある.軍手の上からさらにディスポのビニール手袋を着用するのがよい.また,ビーカーを掴むときはスリッパ型をしたゴム製のホットハンドを使うとよい.
尚,100ml以下であれば素手の上から液体窒素を流下させても凍傷には至らない.手の表面に気化した液体窒素が層を形成することによる.ただし,金属製の指輪などをしている場合は凍傷の危険性が高い.
凍傷になった場合,初期症状は火傷と同様である.応急処置としてはぬるま湯につけるのがよい.凍傷の程度により「水ぶくれ」を生じる.
火傷の場合と異なり,水ぶくれが治まれば一旦皮膚は合着し(細胞の表面抗原が変性していないため?),やがて剥離する.
いずれにしても応急処置の後,医師の診断を受けること.