林産試験場では,平成9〜12年度の4年間にわたり「道産I形梁の開発」に取り組んできました。この研究は,道産材を用いた。形梁を開発し,ツーバイフォー住宅の床根太として実用化することを目的としています。その概要についてご紹介いたします。
●研究の背景
北海道は,全国で最もツーバイフォー工法の盛んな地域であり,国内で唯一,地域材(道産トドマツ間伐材)による枠組部材の生産も行われています。しかし,それは204材や206材といった壁部材に限定され,床組や小屋組に用いる210材といった梁せいの大きな部材については,すべて輸入に依存しており,為替や景気などによる大きな価格変動を受けていました。
また,住宅の高気密高断熱化と機械換気の普及が進んだことによって,床根太部材である210材が乾燥収縮してトラブルを引き起こすケースが増えてきました。
そこで,道産材によるI形梁を開発することによって,部材の安定供給と地域振興を図るとともに,ツーバイフォー住宅の床組性能を向上させることを目指して,研究がスタートしました。
●形梁のコンセプト
使用する材料は,前述の道産トドマツ構造材と道産カラマツ構造用合板としました。形状や種類を決めるにあたり,道内の住宅メーカーに対して市場調査を行いました。その結果,主な製品は図2のような3種類となりました。
図2 道産I形梁の断面形状図
●専用装置の開発
道産I形梁を適正に製造するための塗布装置および圧締装置を開発しました。適正条件に基づき製造したI形梁の曲げ強度試験を行ったところ,実用上十分な強度と剛性を持つことが確かめられました。
本装置によって,最長10mのI形梁を1日80体(約1棟分)量産できるようになりました。
●試験施工
写真6 試験施工の様子(1F床組)
試験生産したI形梁を実際の住宅の床根太に施工して,作業性などを検討してみました(写真6)。施工した物件は,旭川市内の戸建て住宅(延べ床面積60坪)で,1F床と2F床に施工しました。使用したI形梁は,梁幅44mmと89mmの2種類で,長さは8.3m,本数は各50体となりました。
大工さんや設計者の方々からは,作業性や品質も良好で,床組もしっかりしており,価格次第では十分普及する材料ではないかとの評価をいただきました。
以上の研究成果をもとに,現在,旭川市の久保木工(株)への技術移転をスタートし,商品化を進めているところです。
(大橋義徳:林産試験場・加工科)
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