1.北海道立林産試験場の開発技術の実用化

 林産試験場では,毎年20件を越える新規の経常研究を行っています。これらの課題には,基礎的なものと,実用化できるものがあります。北海道の木材産業は,今新しい技術導入を図ることが必要であり,これらの研究成果(技術シーズ)を活用することによって,新分野の製品開発,および高度な技術導入を行うことが可能となります。
 北海道水産林務部では,林産試験場で開発された技術を効果的,かつ迅速に企業などへ普及することを目的として,平成9〜13年度までの予定で「木材産業技術高度化促進事業」を実施しています。この事業は,2つの柱で構成されており,一つはいろいろな分野の専門家で構成される委員会を設置し,林産業界や林産試験場で今後検討しなければならない事項の提案をしてもらいます。またもう一つの柱は,林産試験場で開発された技術シーズの企業化を図るものです。
 新製品,新技術の開発,普及を計画する企業は,それを行うためにかなりのリスクを負っています。この事業は,このリスクを低減するために助成金制度を設け,高付加価値製品や高度な技術を有する企業の育成を行うことを目的としたものです。その内容としては,木材・木製品製造業を営む企業および団体,森林組合,森林組合連合会が,林産試験場の技術シーズで得られる製品・技術に関して,それぞれの状況に応じた製造条件の検討,利用用途の検討・選定,製品が具備すべき要件の整理,製品の試作およびコスト試算を行います。同時にマーケティングリサーチ,テストマーケット活動,試作品の性能評価,マーケット情報の調査・分析,マーケット戦略の検討を行い,商品化の可能性を探るというものです。
 今まで,次のような6課題が事業化されています。

『木質系油吸着マットの多用途製品と生産システムの開発』
(北海道森林組合連合会:平成 9〜10年度)
 マット化した木質系油吸着材の用途を拡大するとともに,マット製品生産工程の検討・改良を行うことによりコストダウンを図った。

『木製防火玄関戸の開発』
(久保木工株式会社:平成 9〜10年度)
耐久性・防火性・デザイン性の優れた木製甲種防火玄関戸(片開きタイプ)と木製乙種防火戸(片引きタイプ)を開発し,建設大臣認定を取得した。

『木製防火シャッターの開発』
(日本ドアコーポレーション株式会社:平成10〜11年度)
 耐久性・防火性・デザイン性の優れた木製防火シャッターを開発し,乙種防火戸の建設大臣認定を取得した。

『間伐材の高温乾燥による建築構造材への利用開発』
(新住宅システム開発協同組合:平成10〜11年度)
 トドマツ間伐材を建築構造材として利用するために,高温乾燥技術の実用化を行った。

『地場木材およびアンモニア処理材を利用した木質系土木資材の開発』
(シスコン・カムイ株式会社:平成11〜12年度)
 アンモニアによるカラマツ材の着色技術を活用し,色あせなどの経年劣化を防止できる新しい構造・デザイン・強度を持った公共用土木資材(高速道路などの進入防止柵など)の製品開発を行う。

『枠組壁工法用横架材(I形梁)製造システム』
(久保木工株式会社:平成12〜13年度)
 トドマツ中小径材およびカラマツ合板を用いて,低コスト化を図ったI形梁の製造システムの確立を図る。

 以下には,4課題についての担当研究員による紹介記事(3編)を掲載します。

(石井 誠:林産試験場・企画課)


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