ホウレンソウ(学名 Spinacia oleraceaL.) は,他の野菜と同様に被子植物のメンバーです。被子植物系統グループ分類体系(Angiosperm Phylogeny Group,APG) および最近のヒユ科並びにアカザ亜科(Chenopodioideae)の系統学的研究成果を参考にして、ホウレンソウの分類学的位置づけについて下に示しました。
APG第2版おいて、かつてのアカザ科(Chenopodiaceaeまたはgoosefoot family)とヒユ科(Amaranthaceae)は、改めてヒユ科 (Amaranthaceae)として一つの科に統合されました。このような経緯を考慮して、現行のヒユ科を意味する用語として 「Chenopodiaceae-Amaranthaceae alliance」もしくは「Amaranthaceae s.l.」を用いることがあります。 さらに,論文を執筆する際には古い分類体系を用いた方が都合が良いこともあるので、研究者によっては旧アカザ科および旧ヒユ科を意味する用語として Chenopodiaceae s.s. (または,the goosefoot family )およびAmaranthaceae s.s.を敢えて使うことがあります。ちなみに、 ホウレンソウはChenopodiaceae s.s. (goosefoot family)のメンバーです。 (「s.s.」は,sensu strictoの略で「狭義」を意味する。「s.l.」は,sensu latoの略で「広義」を意味する。)
ヒユ科は、さらにいくつかの亜科(subfamily)に分類されています。ヒユ科の主要作物であるホウレンソウとテンサイ (Beta vulgaris L.) は、かつて 'goosefoot family' のメンバーとして扱われていたようですが、現在はそれぞれ異なる亜科(ChenopodioideaeおよびBetoideae)のメンバーとして扱われ ています。ややこしいですが,ホウレンソウが属するアカザ亜科の学名は「Chenopodioideae」であり,Chenopodiaceae と似ているので注意が必要です。
THE ANGIOSPERM PHYLOGENY GROUP, An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG II Volume 141, Issue 4, pages 399–436, April 2003
Gudrun Kadereit, David Ackerly and Michael D. Pirie, A broader model for C4 photosynthesis evolution in plants inferred from the goosefoot family (Chenopodiaceae s.s.), (2012) Proc. R. Soc. B 279, 3304–3311
Susy Fuentes-Bazan, Pertti Uotila, Thomas Borsch, A novel
phylogeny-based generic classification for Chenopodium sensu lato, and
a tribal rearrangement of Chenopodioideae (Chenopodiaceae) (2012)
Willdenowia 42(1):5-24. 2012
Sandra Hohmann, Joachim W. Kadereit and Gudrun Kadereit, Understanding Mediterranean-Californian Disjunctions: Molecular Evidence from Chenopodiaceae-Betoideae,(2006) Taxon, 55, , 67-78
このページに掲載した文章・図などの転載を禁じます。
このページに関するお問い合わせは下記まで
小野寺康之 onodera(at)abs.agr.hokudai.ac.jp