ホウレンソウは栄養価が高い葉菜として人気が高く、主要な産地は北海道から九州まで全国的です。さらに、政府が定めた「指定野菜」として重要野菜 14品目の一角を占めています。国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization, FAO)の統計によれば,現在,ホウレンソウは少なくとも世界50カ国以上で生産されており、日本の生産高は中国,米国に次ぐ世界第3位の規模を誇りま す。
日本などの先進諸国におけるホウレンソウ主要品種は全てF1品種(一代雑種品種)で占められています。日本を含む世界中の野 菜の品種開発を行う企業(種苗企業)は、より優れたF1品種の開発に激しく鎬を削り合っています.かつては,ゲノム情報を積極的に活用した品種開発(育種)は、穀類を中心とする一部の作物に限られていました。しかし、近年のシーケンス(塩基配列決定) 技術の飛躍的な進歩(第2、第3、第4世代シーケンサーの登場)によって、野菜を含む様々な作物の全ゲノム配列が決定されようになり、状況は一変しまし た。今後、ホウレンソウを含む野菜の品種開発においてもゲノム育種の技術(ゲノム情報を積極的に活用した効率的な育種法)の重要性は高まると予想しています。
私たちは、ホウレンソウのF1ハイブリッド品種を効率的に開発するゲノム育種技術の確立に向けて、種苗会社と連携しながら、ホウレンソウの性染色体のゲノム配列情報と性決定機構の解明に取り組んでいます。
植物育種学:角田・高橋・常脇・大村・伊藤 (1977)文英堂
Springer NM, Stupar RM, Allelic variation and heterosis in maize: How do two halves make more than a whole? (2007) Genome Res. 17: 264-75