研究内容(テンサイ)

現在進行中の研究
ミトコンドリアと核の相互作用

研究テーマのキーワード

  • ミトコンドリア遺伝子の発現制御
  • ミトコンドリア機能
  • 稔性回復遺伝子の作用
  • 稔性回復遺伝子の起原
  • 多様な核ミトコンドリア相互作用

元来独立した生物であったミトコンドリアが真核細胞の構成要素となって生命活動を 支えるためには核との協調が必要不可欠であり、ここに破綻をきたすとミトコンドリアの 正常な機能は望めず、多細胞生物では高次生命現象に異常を来す。細胞質雄性不稔性は 高等植物でミトコンドリアと核の相互作用を遺伝学的に記述した好例であり、 ミトコンドリアゲノムと核ゲノムの各々が保持する遺伝因子の相互作用により表現型が 決定される(下図)。このシステムに関して、作用機構と進化的な側面の両方から研究を進め、 理解を深めることを目指している。材料はテンサイ(サトウダイコン)やナデシコ目植物である。

細胞質雄性不稔の仕組み
雄性不稔性

研究テーマのキーワード

  • 雄性不稔性のメカニズム
  • 雄性不稔性の誘発

被子植物の多くは一つの花の中に雄性器官と雌性器官を同居させる両性花を着生するが、 植物種によってはある頻度で遺伝的に雄性器官を欠く個体が出現し、機能的雌と呼ばれる。 細胞質雄性不稔性は機能的雌を生ずる代表的な遺伝的機構であるが、分子レベルの メカニズムは不明である。加えて細胞質雄性不稔性の機構解明は学問的な意義のみならず、 生殖制御を通じた育種技術構築という応用的な側面も持つ。以上のような観点から既存の 雄性不稔株における形質発現解析と人為的な雄性不稔性誘発システムの構築に取り組ん でいる。材料はテンサイ、タバコあるいはシロイヌナズナである。

新規の育種技術開発を支える基礎知見

研究テーマのキーワード

  • 育種における効率的選抜システム
  • 細胞工学的手法

ゲノム情報蓄積や、分子遺伝学的技術の発達はめざましく、アイデア次第で従来の育種法を 凌駕するような画期的な手法が可能になるかもしれない。その一方で、意外な問題が解決 されることなく放置されている。これまでにない育種技術開発や、作物の新たな利用法を目指し、 基礎研究を行っている。材料はテンサイ、タバコあるいはシロイヌナズナである。

これまでに行ってきた研究
細胞質ゲノムの構造・発現

細胞質の関わる遺伝現象は知られていたが、その担架体である細胞質ゲノムに関する知見は あまりに乏しいのが実情であった。異なる表現型を付与する細胞質、あるいは類縁度の異なる 細胞質に由来するゲノムの構造や遺伝子発現の差異を明らかにしてきた。 詳細は以下の総説をご参照下さい。

  • Kubo T, Newton KJ, Angiosperm mitochondrial genomes amd mutations. Mitochondrion, 8: 5-14, 2008
  • Kubo T, Mikami T, Organization and variation of angiosperm mitochondrial genome, Physiologia Plantarum, 129: 6-13, 2007
  • 久保友彦,「ミトコンドリアゲノムと細胞質雄性不稔性」,育種学研究, 8: 135-141, 2006
  • 久保友彦,三上哲夫,「植物の性表現を変えるミトコンドリア遺伝子と核遺伝子の相互作用」,蛋白質 核酸 酵素, 50:1803-1807, 2005

ビートワールドも見て下さい。遺伝子制御学の研究成果を少し載せています。