4回札幌GMO対話フォーラム

日  時: 2007年3月16日(金) 10:30~12:30
会  場: コープさっぽろ北12条店 組合員活動本部
主  催: 遺伝子組換え作物対話フォーラムプロジェクト
共  催: コープさっぽろ組合員活動部
参加者: 9名(講師含む)( +PJ3名) 総数12名

進  行: 10:30~10:35 開催挨拶 コープ&吉田
       10:35~11:52 スピーチと質疑応答
       11:52~12:32 意見交換
       12:35       終了

話題提供

安居院 高志 北海道大学大学院獣医学研究院教授

     『動物実験ってなに?』

要旨(スピーチの前半と後半とでは内容が異なるので、二部構成にします。)

1.動物実験とは何か:

 動物実験の歴史は古代ギリシアのヒポクラテス(460-377 B.C.)にまで遡る。19世紀の生理学者であるクロード・ベルナール(1813-78)は、「動物にとって苦痛であろうとも人間にとって有益である限り、動物実験はあくまで道徳にかなっている」と述べた。

 動物実験の再現性を担保する条件は三つある。一つは遺伝的均一性の担保である。二つ目は微生物学的清浄化(SPFなど)であり、三つ目は飼育実験環境(温度、湿度、照明)の均一化である。また、医薬品の安全性試験には一般毒性実験と特殊毒性実験がある。

 遺伝的均一性を担保するために、マウスやラットの近交系とクローズド・コロニーが作られた。近交系は20世代以上兄妹交配を重ねたものであり、遺伝的特質により数百種類の系統がある。クローズド・コロニーは、5年以上外部から種動物を導入せず一定集団内で繁殖を続けた群であるが、ブリーダーごとに群れの遺伝的性質は異なる。

2.動物実験と動物の福祉:

 動物実験反対運動があり、動物実験の自主的規制が行われてきた。現在、動物福祉に配慮した質の高い動物実験が求められており、第三者認証機関がその実践に対する証明を行う。

 実験動物の福祉とは、「実験動物には、たとえ実験に使用され最終的に処分されようとも、意識のある間は苦痛を感じることなく安寧に生活する権利がある」というものである。基本概念は、Replacement (代替)、Reduction(削減)、Refinement(苦痛の軽減)の3Rであり、各種規制(法律・省令・基準・条例・指針)で担保されている。

 獣医師が対象とする動物は家畜(第一の家畜である産業動物、第二の家畜である伴侶動物、第三の家畜である展示動物、第四の家畜である実験動物)と野生動物である。実験動物専門獣医師の役割は、①疾病の予防・診断・治療、②実験動物の麻酔・鎮痛・術後管理、③動物実験計画書の審査、④実験者への指導・アドバイス、⑤実験動物施設の管理・運営・労働衛生の確保、⑥一般社会・市民への啓蒙、⑦研究などである。

質疑応答(Q&A形式で)

  Q:近交系ではおかしいのは出ないのか(生まれてこないのか)?
  A:兄妹交配では、でる。しかし、でない系統も出てくるので、その系統を選ぶ。14〜15世代くらいまでいくと大体途絶えるが、
    それを乗り越えると、たまに、両親の形質をうまく混ぜたようなものが安定的にできる。それが今出回っている近交系。
    表面上異常はないが、欠点は色々。だが欠点は遺伝病ではなく特質となり、数百種類の系統となる。マウスやラットで成り立つ。
  
  Q:実験動物の持っている性質と人間の持っている性質との相似性はどうなっているのか?
  A:外挿が一番難しい。マウスやラットで出た結果がそのまま人間に当てはまるとは考えていない。
    しかし医薬品の毒性試験としていきなり人間でやるわけにはいかない。このための(死なないという程度で)安全性担保試験
    としての意味。絶対安全を示すものではない。

  Q:人間に近いサルでは(毒性試験を)しないのか?
  A:動物福祉の観点から余り行われない。
    サルは、ヒトと同様近交系にはできなくて、再現性の問題から毒性試験の実験には不向き。
    マウスとヒトでは遺伝子数に大差がなく、外挿可能と見てよい。また、代謝の異なるところも分かっている。
   
  Q:エルマコバさんの使ったウィスターに問題はあるのでしょうか?
  A:世界で一番多く使われているクローズド・コロニーの一系統で問題はない。近交系ほど厳密ではないので、
    一匹一匹に特徴があり、差が出る。
    遺伝的バリエーションがあった方がいい場合はむしろこれを使う。値段が安いので多くの人はクローズドを使う。
    日本のウィスターとロシアのウィスターは、ブリーダーが違うので、正確に言うと違う。注意を要する。
   
  Q:再現性はウィスターでは難しいの?たくさん実験すれば同じような結果になりますか?
  A:ウィスターを使っても、エルマコバ実験と日本のウィスターを使った実験(仮にやったとして)とでは、それぞれの実験の中では
    色々検討できるものの、両者の比較は出来ない。死亡率も当然違ってくる。(ブリーダーが違うと)遺伝的に
    だいぶ違ってきているから。
    ウィスターの表記にはスラッシュを付けてブリーダーを表示する。ブリーダーが同じであれば比較も可能だ。
    実験ではこういったこともキチンと書かなければならない。