3回千歳GMO対話フォーラム

日  時: 11 月18日(土) 13:30〜16:30
会  場: 千歳市東雲会館
主  催: 遺伝子組換え作物対話フォーラムプロジェクト
共  催: 千産千消クラブ
参加者: 8名(講師含む)( +報道1名+PJ6名) 総数15名

進  行: 13:30〜13:40 開催挨拶
       13:40〜15:00 スピーチ(1時間)と意見交換(20分)(1)
       15:15〜16:45 意見交換(2)
       16:45       終了

話題提供

  喜多村 啓介 北海道大学大学院農学研究院教授

       『遺伝子組換え作物の特質とその可能性』〜研究者の立場から〜』

要旨

 世界の人口増加と耕地面積の増加は関連している。選抜育種、交雑育種、一代雑種育種そして突然変異育種や遺伝子組換え育種などを通して、ヒトは作物の収量増を図ってきた。アメリカでの除草剤耐性大豆の作付け面積率は85%2004年)であり、アルゼンチンでは99%2004年)である。普及した理由は、@不耕起栽培との親和性、A除草剤の作物への影響回避と後作への影響の減少、B生産の省力化である。

 植物は栽培化の過程で種子の休眠性や脱粒性を消し、病害虫への防御・忌避作用をもつ有毒成分や苦味成分を消してきた。進化・分化の過程で、生物・非生物的ストレスに対する耐性を特異的に獲得してもいる。生殖バリヤーを越え有用な遺伝形質を利用できれば、作物の改良は無限である。われわれは、インゲンマメ由来のα-AIを導入した組換えアズキの耐虫性を確認した。

 ゲノム科学の発達で解明された各種成分の生合成経路や酵素遺伝子情報を利用し、作物成分(栄養素:タンパク質、脂質、炭水化物;機能性成分:抗酸化成分、抗変異源成分、抗アレルギー成分)を画期的に改変することが可能となった。農作物の非食利用部分を対象として、エネルギー源や工業用素材さらには製薬素材用に改変された植物を利用する時代が来るであろう。

 一方、GM作物には技術的未熟性の問題がある。水利用効率や耐塩性など、多数の要因が複雑に絡むような形質の場合、それらの改良は現段階の未熟なGM技術単独では解決できない。植物生理学、分子遺伝学、ゲノム学、栽培育種学など種々の学問分野の共同研究が必要で、異分野融合領域への積極的研究投資が不可欠である。

 また、医薬品や工業用物質を生産するGM作物の食用への混入を完璧に防ぐために、どういった方策をとるかに関する問題である。これはGM作物の開発・利用を巡る今後の問題として大きな課題である。

 GM技術の登場により、これからの育種技術は益々高度化・特殊化する。このことは同時に育種技術の特許化・寡占化が進むことを意味している。未来において育種技術が人類に偏向のない福音をもたらすために、確とした方策を求め続ける必要がある。