* 川口光倫(Kawaguchi Korin) [#x43fbc67]
 
 ** 修論テーマ [#r0e3268e]
 - 落葉樹に対するオゾンと二酸化炭素の曝露実験~
 
  高濃度のオゾン(O3)は葉の機能を低下させますが、O3濃度と光合成の材料である二酸化炭素(CO2)濃度が同時に高い条件では、気孔が閉じ気味になることでO3の葉内への取り込みが減少することや葉内の防御物質の供給が促進されることなどにより、O3の悪影響が緩和されること、また、高濃度CO2・O3単独の条件よりも光合成機能やバイオマスが高くなる複合作用が生じる場合があることが報告されています。~
  このような現象の検証やプロセス解明も念頭に、今後も増え続けるCO2だけでなく、同様に増加傾向にある対流圏のO3を考慮することで、将来の大気環境下における森林の炭素吸収能力や樹木種の適応能力を過大・過小評価しないような提案ができればと思っています。~
  具体的には、フィールドで樹木を育成し、葉の構造・機能・化学成分の測定、個体のサイズ計測などを行っています。~
  本研究と同様にチャンバーを用いたCO2とO3の同時付加実験では、以下の論文が参考文献の例として挙げられます。~
 
  ・Watanabe M, Umemoto-Yamaguchi M, Koike T, Izuta T. (2010) Growth and photosynthetic response of '''Fagus crenata''' seedlings to ozone and/or elevated carbon dioxide. '''Landscape and Ecological Engineering''' 6:181-190.
 
  ・Riikonen J, Holopainen T, Oksanen E, Vapaavuori E. (2005) Leaf photosynthetic characteristics of silver birch during three years of exposure to elevated concentrations of CO2 and O3 in the field. '''Tree Physiology''' 25:621-632.
 
  学会で質問がありましたが、本研究では(株)ダルトンの協力により設備を構築し、実験精度の向上に努めています。~
  また、閉鎖的なグロ−スチャンバーと比べ外気への拡散性に優れたOTCですが、チャンバー内環境の変化、つまり気温の上昇や光量の低下、風速の問題などいわゆる「チャンバー効果」を避けることは不可能です。例えば、上のRiikonenら(2005)の報告では、平均で1.7〜2.4℃のチャンバー内温度上昇が見られています。あくまで比較実験としてこの研究を用い、Free-airの実験と比較することで「スケーリングアップ」を図ることも今後の課題といえます。~
  OTCを(Free-airシステムと相補的に)用いることの有用性については、以下の論文が参考になります。
 
  ・Matyssek R,Karnosky DF,Wieser D,Percy K,Oksanen E,Grams TEE,Kubiske M,Hanke D,Pretzsch H.(2010) Advances in understanding ozone impact on forest trees: Messages from novel phytotron and free-air fumigation studies. '''Environmental Pollution''' 158:1990-2006.
 
 
 ** 学会発表 [#ed0f309e]
 - 川口光倫・渡辺誠・星加康智・稲田直輝・小池孝良.シラカンバの葉の展開は大気変化に影響されるか.(第61回北方森林学会:2012年11月)
 - Kawaguchi K, Inada N, Mao Q, Watanabe M, Koike T. Birch leaves under higher atmospheric CO2/O3. (第55回国際植生学会シンポジウム:2012年7月)
 - 川口光倫・渡辺誠・稲田直輝・上田龍四郎・佐藤冬樹・小池孝良. 落葉樹種に対する高濃度の二酸化炭素とオゾンによる単独および複合作用.(第123回日本森林学会大会:2012年3月)
 - 川口光倫・大澤晃.カナダの'''Pinus banksiana'''天然生若齢林での倒木と林分構造との関係.(第60回北方森林学会:2011年11月)
 
 ** 国際誌論文 [#l6bf6cec]
 - Kawaguchi K., Hoshika Y., Watanabe M., Koike T. (2012) Ecophysiological responses of northern birch forests to the changing atmospheric CO2 and O3 concentrations.
 Asian Journal of Atmospheric Environment, Vol. 6, No. 3: pp192-205.
 
 ** … [#y8c38043]
 - 2012春~
 もともと「環境」というものに大きく関わろうとは思っていませんでした。森林や樹木を生物的な視点から見ることに興味がありましたが、修士での研究を「興味」というよりはより「仕事」的に1年間行い(環境省地球環境研究推進費(B-1105)と科研費(23380078)の一部支援を得ています)、意外にも環境と樹木・森林が直接結び付けられて議論されることが少ないのではないかと感じています。~
 また、視点を変えれば、環境ストレスを「樹木の成長に影響する1つの変数」とみなすこともでき、より生物学的な解釈ができそうだと思っています。
 今後は、葉―樹木個体―樹木群集―森林景観といった異なるレベルの議論をどう結び付けるか、そして樹種間差や樹齢、生息地による応答の違いなどをどう一般化するかということについて、より考えたいです。~
 ~
 - 2011夏~
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 21世紀末における地上気温の変化の予測(1980〜1999年比)。複数の大気海洋結合モデルによって計算された予測値の平均。([[IPCC2007報告書>http://www.ipcc.ch/publications_and_data/ar4/syr/en/spms3.html]]より)~
 ~
 初めてIPCC2007報告書を読みましたが、改めて世間の平和さを感じました。文字やグラフにすると恐ろしいことがよくわかります。~
 時空間的に身の周りの小さなことしか興味がないのが人間の本性なのかもしれないけれど、それに逆らわなくては進化してるといえない気が。科学技術だけ進歩してるけどマスコミとか政治家とか責任ある人々に変わってもらいたいですよね。研究成果を生かしてほしい。と同時に研究者のアウトプットも大事だと感じています。
  
 
 
 ** 所属・連絡先 [#hd4114ed]
 - 北海道大学大学院農学院博士前期課程2年
 - 大部屋N368:〒060-8589 札幌市北区北9条西9丁目 北海道大学大学院農学院
 - 電話:011-706-2523
 - メールアドレス:kkawa@for.agr.hokudai.ac.jp (@→半角にする)
 
 -こちらから[[メンバーへ戻る>http://www.agr.hokudai.ac.jp/fres/silv/index.php?%A5%E1%A5%F3%A5%D0%A1%BC]]
 

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