光環境に対する植物の順応シリーズ7 -個体サイズおよび光環境と植物の形態および生理特性の関係- Physiological, morphological and allocational plasticity in understory deciduous trees: importance of plant size and light availability

発表文献

  1. Delagrange, S.; Messier, C.; Lechowicz, M.J.; Dizengremel, P. 2004. Physiological, morphological and allocational plasticity in understory deciduous trees: importance of plant size and light availability. Tree Physiol. 24: 775-784.

Abstract

前回までで、光環境の違いに対して植物はどのような形態的・生理的順応を行うか、またそれらの順応と考えられる形質が植物の個体サイズそのものによっても影響を受けるということを紹介してきた。今回は、光と個体サイズが、形態・生理特性両方に与える影響を検討した論文を紹介し、前回まで概念的に述べてきたことの実例を紹介したい。

この研究では林内のさまざまな光環境に生育するBetula alleghaniensisおよび耐陰性が高いAcer saccharumの稚樹を対象に、生理特性、相対成長量、形態を測定した。また、自然状態の稚樹に加えて被陰処理を行った稚樹も設定した。

その結果、光環境の違いは主に最大光合成速度や暗呼吸速度といった生理特性に、個体サイズの違いは葉・枝・根への投資率やLAR、細根率といった形態に影響していた。また、形態の変異は個体サイズが大きいほど小さく、これは個体サイズが大きくなると、形態を変化させることが困難になるから(変化させる部分の絶対量が多くなる)ではないかと考えられた。

この研究のような、光環境を定量的に把握し、個体サイズの影響を考慮し、考えられる植物側の順応を包括的に調べる研究を蓄積することで、光環境に対する植物の順応機構をより理解することができるだろう。

発表ファイル

当日はpower pointによる発表を予定しています。忙しくてまだファイルはできていませんごめんなさいm(__)m

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キーワード: 耐陰性、個体サイズ、形態、生理特性


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雌花両性花異株のGeranium sylvaticumの、雌個体と両性個体における性配分

発表文献

Abstract

多くの被子植物の花は、両性花であり、適応度の獲得は雌雄両器官を通して均等に行なわれる。しかし、被子植物の一部は同じ集団の中に雌個体と両性個体が存在する雌花両性花異株である。本研究では雌花両性花異株のGeranium sylvaticum個体群の、雌個体と両性個体における種子生産と性配分パターンについて調査を行なった。2つの個体群のうちの片方のみ、両性個体より雌個体のほうが多くのつぼみと種子を生産した。他の調査項目(胚珠のバイオマス、果実ごとの種子数、個体ごとの種子の質量)については性型(雌か両性か)による違いは見られなかった。2つの個体群間の両性個体の種子の相対適応度は異なり、雌個体の頻度の高い個体群では両性個体は雌個体に比べて雌を通した適応度が低かった。しかし、花粉の量やサイズは両個体群で違いが見られなかった。雌個体におけるつぼみの数は種子生産と正の相関があったが、両性個体は2つのうち1つの個体群でのみ、正の相関が見られた。このような結果から、この種の両性個体における雌器官を通した適応度は変わりやすく、もしかしたら個体群内の性比のように環境要因に影響を受けているかもしれないということが考えられる。

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分野ゼミ/文献紹介ゼミ/2005-08-01 vol.20 のバックアップ(No.3)