* 森林生理生態学的アプローチ [#l73381ed]
 変動環境下(温暖化や酸性沈着の増加、特に窒素沈着量の増加する環境)での森林管理を行う基礎データを収集している。
 *** −森林生理生態学の考え方− [#d5336740]
  各種環境と樹木とその集団の成長との関係を解明し、森林育成と森林生態系修復の基礎学となる体系を森林生理生態学と呼ぶ。動物学を基礎に発展してきた体系では、体内の応答を重視した環境生理学(植物では生態生理学)という概念があり、固着性を特徴とする植物では、より環境を重視して生理生態学の体系が進展してきた。
  私たちの森林生理生態学へのアプローチは、樹木の光合成活動を縦軸に、森林動態解析を横軸として樹木の成長から森林の発達へ迫るように心がけている。それは光合成産物がどのように分配されるか、という見方と考え方である。
 
  増え続ける人口を扶養するために、森林域を改変して耕地面積を拡大してきたが、耕地面積の増加分と森林面積の減少分は、残念ながら一致しない。耕地にできず荒廃地となった土地が多く存在する。森林生理生態学の使命の一つには、この荒廃地の再生を目標として生態系修復を成功する体系の構築がある。
 
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  増加し続ける世界人口と減少し続ける森林面積。そして僅かながら増加した農耕地。赤丸部分は荒廃地になる。この部分をどの様に修復するか?(内嶋善兵衛 1992)
 
 *** 変動環境と森林の保全生態管理にむけて [#w6578e32]
  人類は利便性を追及し、地球の資源を大量に消費して産業活動を行ってきました。しかしその結果、酸性雨、大気中CO2濃度の上昇、窒素沈着、オゾンホールの形成など、本来の自然環境からは大きく逸脱した環境条件が形成されつつあり、しかも、その進行速度は急加速しています。このような変動環境に対し、森林植物がどのように応答するのかを明らかにすることは、自然環境を保全する上でも、人類の生活環境を健全に保つためにも必要不可欠です。
 工事中!
  進行し続ける変動環境(酸性雨。大気中CO2濃度による温暖化を中心とした)のもとで、木質資源生産だけを見ても針葉樹で30〜40年、銘木とされる広葉樹では100〜200年の生産期間が必要とされる。この変動環境を意識した造林学が求められる。1989年に米国、Duke大学のPhytotronその進行速度は急加速しています。このような変動環境に対し、森林植物がどのように応答するのかを明らかにすることは、自然環境を保全する上でも、人類の生活環境を健全に保つためにも必要不可欠です。
 
  私たちは、野外実験と制御環境を利用して、大気CO2濃度の上昇や窒素沈着、特殊土壌に対する森林植物の応答を、[[北大北方生物圏フィールド科学センター>http://forest.fsc.hokudai.ac.jp/~exfor/fr/]]や[[森林総合研究所>http://ss.ffpri.affrc.go.jp/index-j.html]]などとも協力しながら研究しています。また、近年では世界レベルで問題となっている山火事跡地の再生メカニズムの生理生態学や侵入種の制御に関する研究をニセアカシアをモデルとして生態学生理的手法を用いて研究を始めています。
 
 ** 大気中の高CO2と窒素沈着に対する植物の応答 [#q79e48a8]
 工事中
 
 ** 山火事跡地の再生メカニズムに関する研究 [#l8f8d8a5]
 (詳細記事は[[研究紹介]]の「森林生理生態」研究の記事:[[小林真]]著を参考に);~
 2004年、ロシア共和国・アムール州の州都、ブラガベシェンスクにある極東農業総合大学(Far East State Agriculture University; FESAU)との連携研究が寺澤実名誉教授によって開始された。FESAUはロシア極東部(ハバロフスク、マガダン、サハリン、アムール、カムチャツカ、沿海州)の農林関係の指導者を輩出してきた。~
 &ref(ブラガ葉むしり.jpg);:                            &ref(ブラガキャンプ.jpg);~
 ロシア研究者と生産力の調査              野外研究では食事が生き抜き(ボルシチは最高!)
 ロシア研究者と生産力の調査               野外研究の食事は息抜き(ボルシチは最高!)
 
 この大学が窓口となり、環境省地球環境研究推進費(森林総研からの受託)・日本学術振興会の予算を利用して、これまでの知識を収集し、山火事跡の森林再生研究を進めてきた。しかし、設定した試験地が翌年にはまさに山火事によって消失するなどのアクシデントが有ったにもかかわらず、北方生物圏フィールド科学センターの佐藤冬樹・吉田俊也・笹 賀一郎氏ら同僚とともに、[[小林真]](Makoto, K.)君(現在;日本学術振興会特別研究員)の不屈の精神・好奇心によって[[天塩研究林>http://forest.fsc.hokudai.ac.jp/~exfor/fr/]]を中心に、本邦初の巨大操作実験へと展開している(写真は小林君による)。~
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 中間報告書は北大研究林とロシア最大規模の森林研究所である姉妹校・V.N.Sukachev森林研究所が中心になって刊行している[[Eurasian Journal of Forest Research>http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/22025?locale=en]]の第10巻1号として2007年3月に出版された。~
 
 【参考文献】~
 Zyryanova, O.A., Yabarov, V.T., Tchikhacheva, T.L., Koike, T., Makoto, K., Matsuura, Y., Satoh, F., and Zyryanova, V. I. (2007) The structure and biodiversity after fire disturbance in '''Larix gmelinii''' (Rupr.) Rupr. forests, northeastern Asia. Eurasian Journal of Forest Research 10: 19-29.~
 
 Makoto, K., Nemilostiv, Y.P., Zyryanova, O.A., Kajimoto, T., Matsuura, Y., Yoshida, T., Satoh, F., Sasa, K. and Koike, T. (2007) Regeneration after forest fires in mixed conifer broadleaved forests of the Amur region in Far Eastern Russia: the relationship between species specific traits against fire and recent fire regimes. Eurasian Journal of Forest Research 10: 51-58.

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森林生理生態学 のバックアップ差分(No.3)