江口 則和 (EGUCHI, Norikazu)

自己紹介

研究テーマ

地球環境変化が(特に大気中CO2濃度の増加)樹木にどのような影響をもたらすのか、 ということをテーマに、生理生態学の面から研究を続けてきました。

 CO2濃度の高い環境下で長期間植物を生育させると、なんと驚いたことに葉の光合成能力は低下するんです。これを光合成のダウンレギュレーションっていいます。どうしてこのようなダウンレギュレーションが起こるのか、っていうことは、これまで生化学的な面から(葉の窒素量が減るからとか、光合成産物が葉にたまってしまうからだとか・・・)いろいろと調べられてきました。しかし私はちょっと視点を変えて、光合成と深い関係のある葉の内部構造が変化することも原因の一つじゃないか、って考えました。そうしたら案の定、葉の内部構造が変化していたんです(葉肉細胞の表面積が低下していました!)。このことは、Eguchi et al.(2004) Photosyntheticaにまとめてあります。ですので、興味のある方は参考にしてください。

 一般に光合成の順化は、窒素の少ない貧栄養条件で起こりやすいといわれています。しかし、窒素が少ない貧栄養条件で成長や光合成が活発になる変わった植物も存在します。窒素固定菌と共生する、窒素固定種(マメ科などがその仲間です)と呼ばれるものがそれです。修論では窒素固定種の一つであるケヤマハンノキに着目しました。そして、高CO2濃度環境下でのケヤマハンノキの光合成能力の変化は、近縁であり窒素固定菌と共生しないシラカンバ、ウダイカンバの変化と異なるかどうかをFACE(Free Air CO2 Enrichment)を使って調べました(Phyton 2005)。この際、測定器期として重要な窒素計測器の使用法を向上させました(J. Plant Physiol.2006)。
シラカンバ、ウダイカンバは貧栄養条件で光合成のダウンレギュレーションを示しましたが、ケヤマハンノキでは逆に光合成能力が増加しました。一方、富栄養条件では、シラカンバ、ウダイカンバでダウンレギュレーションを示さないものもいたのですが、ケヤマハンノキでは顕著なダウンレギュレーションが認められました。また、ダウンレギュレーションの原因も、ケヤマハンノキとシラカンバ、ウダイカンバで異なりました(ケヤマハンノキではデンプンが葉に蓄積したため、シラカンバ、ウダイカンバは葉の窒素量や光合成酵素量が低下したため)。種ごとの反応の違いは、窒素固定菌の有無から考察しました。この内容は、Trees-Structure and Functionにon line掲載中ですが、興味のある方はご連絡ください。

 これまでの世界各地で行われてきたCO2付加研究によると、高CO2環境下では気孔が閉じ気味になり、蒸散速度が低下するということが知られています。ところが、植物体内の通水と深い関係のある道管の構造(道管の直径や面積)は、必ずしも低下するという報告は知られていません。どうして蒸散は低下するのに道管の構造はそれにあわせて変化しないのだろう・・・。道管は植物体内の水の流れに大きな影響を与えるため、将来予測される環境下での樹木の水分生理特性を予測・評価していくためには、このことを明らかにすることが必要だと考えました。そこでD1では葉レベルでの反応(葉の蒸散と葉柄の道管面積の変化)、D2ではシュートレベルでの反応(シュート蒸散とシュート主軸の道管面積の変化)を調べました。いずれのレベルでも、蒸散・道管面積ともに一貫した変化をすることが分かりました(具体的にどのような結果が得られたのかということに関して興味のある方は、遠慮なくご連絡ください)。D3では地上部個体レベルでの応答(樹幹での反応)を一部明らかにしました。新しい知見として、葉柄の構造と機能を解明しました(Tree Physiology2008)。

博士論文:大気中CO2 濃度増加に伴う冷温帯落葉樹木の炭素固定能力の変化に関する研究(平成20年3月取得)

これまでの業績

1. 原著論文、査読有

2. 紀要・論文集、査読有

3. 紀要・論文集、査読無

4. 解説、総説

5. 国際会議における発表

(口頭発表)

(ポスター発表)

6. 国内学会・シンポジウム等における発表

(口頭発表)

(ポスター発表)

連絡先


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江口則和 のバックアップ(No.6)