山火事研究の黎明

山火事跡地の再生メカニズムに関する研究

 Under Constructing by Makoto Kobayashi (see here 小林真?)

なぜ、今山火事を研究するのか -北方林における山火事発生様式の変化−

 山火事は元来、北海道を含む北方林において、主要な撹乱要因として森林の更新・維持に重要な役割を果たしてきました。しかし近年、ロシアなどではタバコや焚き火の不始末が原因となって山火事が頻発する一方、スウェーデンやアメリカのイエローストーン国立公園などでは森林火災の管理体制強化から減少するなど、人為的な要因により、北方林における山火事の発生状況は変わってきています。

山火事が少なくなる? いいことじゃないか?

 一見、山火事が少ないことは森林の破壊をともなわないため“よいこと”のように思われます。しかし、極端な管理によって長期にわたって森林に火が入らない場合、有機物の分解速度の遅い北方林では土壌表層に落葉・落枝が過剰に堆積します。すると、一度何かの拍子で火災が発生しますと、堆積した有機物が大量の燃料となり非常に強度の火災へ至ります(小林 2005a,b)。

 強度の山火事の後には、大面積にわたって母樹ものこらず、また埋土種子の多くも死滅してしまう裸地が発生し、軽度の山火事に比べて植生の回復が遅れます。裸地では降雨の際に表層土の侵食および土砂の流出が起こりやすく、長期にわたって裸地のままとなってしまうことも少なくありません。このような裸地の発生は、裸地となってしまった生態系の植生回復はもとより、流域の水土保全的観点から見ても、大きな問題であります。  また逆に、ロシアにおいて山火事が頻発することによって、各火災が弱度になることが植生へ与えるメカニズムについてもMakoto et al. (2007)のなかで考察しました。  

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調査地の様子。軽度の地表火後のシラカンバ林(左)と、強度の樹冠火後の林分の様子(右)。 極東ロシア・アムール州にて

今後、我々が行うべきこと。 山火事のレジームシフトによる影響メカニズムを探る

これらの山火事の発生様式(山火事レジーム)の変化は、木本植生のみならず、森林生態系内の様々な要素(土壌、水質、共生微生物、動物)へ影響を与えることが予測されます。山火事を巧みにコントロールし、持続的かつその土地にあった森林管理を行っていくためにも、我々は、強度の異なる火災が、森林生態系へ与える影響のメカニズムについて見解を深めていく必要があります。これまで、火災強度が変わることで、火災後の林床における種子の発芽率が変化することが示唆されました(小林ら 2007)。

今後は土壌特性、および樹木と共生する菌根菌などの共生微生物に注目し研究を進めて行こうと考えています。その基礎として北方生物圏フィールド科学センター・天塩研究林にて山火事のモデル試験を実施します!

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火災後に生成する炭、灰などの炭化物。これらによって土壌や更新してくる稚樹は様々な影響を受ける。

参考文献:

Makoto, K., Nemilostiv, Y.P., Zyryanova, O.A., Kajimoto, T., Matsuura, Y., Yoshida, T., Satoh, F., Sasa, K., Koike T.(2007) Regeneration after forest fires in mixed conifer broad-leaved forests of the Amur region of Far Eastern Russia: the relationship between species specific traits against fire and recent fire regimes. Eurasian Journal of Forest Research 10: 51-58.

小林真・Bruanin S. V.・ Naumenko, A. Y.,・Nemilostiv, Y. P.・吉田俊哉・佐藤冬樹・笹賀一郎・小池孝良 (2007) 山火事後に形成される様々な林床環境がグイマツ・ヨーロッパアカマツ・エゾマツ種子の発芽に与える影響. −極東ロシア・アムール州の事例−. 日本森林学会北海道支部論文集 55: 23-25.

小林真 (2005a) 韓国で発生した風害、山火事による大規模撹乱跡地の植生回復と更新の視察. 北方林業 57:265-268.

小林真 (2005b) ロシア極東南部の針広混交林における山火事後の森林再生に関する研究のはじまり. 北方林業 58:80-83.


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研究紹介/植物生理生態学/山火事 のバックアップ(No.1)