[新聞記事]

 

 

2000年(平成12年)5月15日(月曜日)の

北海道新聞朝刊に載った記事です。

 

学術文化研究奨励金をいただきました。

 


 

 

 

  

植物バイオテクノロジーによる
アルストロメリアの育種に関する研究

 

北大農学部付属農場助手・星野洋一郎さん

 

人気品種強く美しく

 

アルストロメリアの花と、その培養細胞を手にする星野さん

 南米原産のヒガンバナ科の園芸植物アルストロメリアは、冷涼な気候で育つため道内の花き農家の間で栽培面 積が増えている。このアルストロメリアの品種改良に、遺伝子組み換え技術を用いて取り組んでいる。「病気に強い、成長が早い、花がすぐ咲く、花の色に多様性が出る、といった形質を発現させる遺伝子を、ほかの植物からアルストロメリアに導入したい。その遺伝子を運ぶ“乗り物”選びにめどがついたところです」

 “乗り物”として目を付けたのはアグロバクテリウム。植物の根にコブを作る原因となる病原菌だ。植物に感染すると、体内に持つプラスミドというDNAを植物に移し、発病させる。この性質を利用し、アグロバクテリウムに別 のDNAを入れて送り込めば、そのDNAの持つ形質が植物に発現する、と発想した。

 北海道農業試験場作物開発部の篠田浩一・野菜花き研究室長が共同研究者となり、試験栽培しているアルストロメリアを提供。培養実験は北大の研究室で行う。自然交配による品種改良の歴史はここ二十年程度と比較的短いが、豊富なデータ蓄積が実現の可能性を高めている。しかも研究は他の植物にも応用が利く。遺伝子組み換え技術のデータを得る貴重な機会となる。

 近年、遺伝子組み換え作物の開発とその食品化に対し、安全性が問題になっているが、食品にならない園芸植物なら、人体への影響も心配ない。「研究成果 を広く公開して、遺伝子組み換え植物の安全性、可能性を判断する材料を提供していきたい」

 群馬県沼田市で、コンニャクや園芸植物のシャクヤクを栽培する農家の長男に生まれた。実家を継ぐかどうか、将来のことが折に触れ頭をかすめる。「だから、何らかの形で農家に貢献できる研究を続けていきたいと思うんですよね」

 


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