福島

比曽川流域の紹介

比曽川流域は、福島県相馬郡飯舘村南部に位置する流域面積 25.6 km² の小さな流域です。

ここでは、福島第一原子力発電所事故で飛散した放射性物質の影響を受けた河川流域として、主にSWATモデルを用いた研究が行われています。実際にモデリング対象としているのは、左下の航空写真上に輪郭をとった、わずか 4.45 km² の流域上部です。

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本サイトは福島第一原子力発電所から40 km圏内に位置し、2015年4月現在も、比曽地域を含め飯舘村の大部分が居住制限区域に設定されています。故に水田・農地は現在不作付け地となり、自然草地に覆われている状態です。右上の写真の場所には、もともと奥に水田が広がっていましたが、現在は雑草が茂っていることがわかります。

航空写真から推察されるように、事故前は川沿いに水田や農地、わずかに牧草地が分布し、森林がこれらを取り囲むように広がっていました。

土壌タイプは褐色森林土が5割以上を占め、河川に近い方から、細粒グライ度、灰色低地土、黒ボク土が広がっています。

モデリングには、実測値と推定値の比較によるモデルの校正・検証の過程が必要です。下の写真は、この実測値を観測している地点で、対象流域の最も下流に位置します。2012年12月から現在に至るまで自動観測が行われており、そばには右下の写真にある装置が設置されています。ここでは毎10分の水位、流速、濁度が自動観測されています。また、一定量以上の降雨があるときのみ、自動採水も行われます。これらの観測・分析結果とおよそ月に一度の採水・分析により、毎10分の河川流量、SS量、Cs量の実測値が算出されています。

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対象流域の河川には、水田と水田の間を通る農業用水の流入がところどころに見られます。現在は水田に水を引いていないため、これらの用水は直接本流に流れ込んでいます。

また、比曽川はその大部分が人工的に整備されており、左上の写真のように、川底や岸壁はコンクリートや石から成ります。しかし、上流の水源近くなど、部分的に自然河川も見られます。また、人工河川であっても川底に土砂が堆積していたり、背の高い植物が繁茂している様子も確認できます。これらの河川情報も、SWATデータベースとしてモデル内に記述することで、モデルパフォーマンスの向上に取り組んでいます。

左上の写真では、奥の方に植生に覆われていない土壌表面を確認することができます。これはその農地が、除染された汚染土壌の仮仮置き場予定地であることを示しています。

現在本サイトで行われている研究

不作付流域における放射性セシウムの動態予測
時間スケールの短縮が小規模流域へのSWATモデル適用に与える影響
福島比曽川流域の土壌のカリウム、セシウム吸着特性