新発見!アー バスキュラー菌根菌のウィルス
—進化や表現形質への影響を探る—
新発見!アー バスキュラー菌根菌のウィルス
—進化や表現形質への影響を探る—
菌類の保持しているウィルスを一般にマイコウィルスといい、二重らせんRNA (double-stranded RNA, dsRNA) をゲノムとして持つものが多く知られている。最近、我々のグループでは、菌糸の大量培養系と次世代シーケンス技術を駆使し、世界で初めて絶対共生菌であるアーバスキュラー菌根菌のマイコウィルスの発見に成功した (Ikeda et al., 2012)。
最初にゲノム構造を明らかにしたGRF1V-Mというウィルスは、自己複製酵素 (RNA-dependent RNA polymerase, RdRp) と構造タンパク質 (S7) を持つだけの極めて単純なものであったが、幸運なことに、既知のいずれの分類群にも属さない新種ウィルスであることがわかった。
このウィルスが宿主であるアーバスキュラー菌根菌のGlomus sp. RF1に感染することにより、胞子形成量が半減することなどがわかっているものの、ウィルス感染による表現形質の変化の詳細や、その分子機構についてはわかっていない。
このRF1株には、他にも3種類のウィルスが同時感染していることに加え、この株以外のアーバスキュラー菌根菌にも極めて高頻度でウィルス感染が認められることから、この菌とウィルスは太古の昔から共生し、互いの進化に貢献し合ってきたものと予想される。
今後は、さらに多くの菌株のウィルスを調べ、その表現形質への影響や共進化過程について明らかにしていく予定である。