アーバスキュラー菌根菌を利用した酸性土壌緑化

—岡山県備前市三石鉱山跡地—

 当地では1890年から耐火煉瓦の原料となる蝋石の露天掘りが始まりましたが、近年、閉山したことに伴い跡地修復のための緑化事業が始まりました。蝋石にはパイライト(黄鉄鉱、主成分FeS2)が含まれていることから、表層土の酸化に伴って生成する硫酸のために、土壌が強酸性を呈します。


 強酸性土壌では、通常の吹付け緑化工法による植生回復は困難であるため、当研究室で分離した耐酸性アーバスキュラー菌根菌を利用した緑化工事が数年前から行われています。→強酸性土壌の緑化工法


 堀江氏@日特建設より「植生の定着が順調なので、要因解析を行いたい」と依頼を受け、2015年10月9日に研究室メンバー(+卒業生)に水野先生@三重大生物資源を加えた総勢9名で現場に赴き、土壌と根のサンプルを採取してきました。

 手前はバーク堆肥などを混合した緑化資材を吹き付けた直後の施工面(手前)。ここに菌根菌の胞子も含まれています。奥が今春の施工箇所で、すでに植生が定着している。さらにその奥にはむき出しの岩盤が見える。青〜黄色〜橙色のモザイク模様は典型的な風化の始まったパイライト。

まず、堀江氏@日特建設技術本部(右端)から緑化工事の概要に関しての説明を受ける。

上段:吹付け前の法面,中段:吹付け資材に菌根菌の胞子を混合する作業,下段:施工5か月後

鹿の食害調査用ケージ。食害がなければケージの内側程度に植生が発達していることを示す。