零価鉄粉を用いたカドミウム/ヒ素汚染土壌修復に関する研究

 低レベルカドミウム・ヒ素汚染土壌に対して現在行われている修復法として、酸などで土壌を洗浄する化学的処理や客土があり、実用化段階にある新しい技術として、植物を利用して土壌中の有害元素を収奪するファイトレメディエーションがある。しかし、前者はコストが高い、後者は速効性がないという問題点がある。比較的安価で速効性のある対策法として資材による土壌中の有害元素不溶化がある。

零化鉄粉によるイネおよびホウレンソウのカドミウム吸収抑制

 我々は地下水などに含まれる有害物質の除去に用いられている零価の鉄粉(零価鉄:Fe(0))に注目した。零価鉄粉は強い還元力を持ち、それを利用した有機ハロゲン化合物等の分解(特開2007-9179等)や重金属類の還元不溶化、さらに吸着能力を利用したヒ素、セレンなどの不活性化(特開2006-312163等)で研究が進められている。零価鉄粉は以下の三つの反応で様々な物質を分解あるいは安定化する:①Fe(0)またはFe(II)の持つ還元力による沈殿および分解、②Fe(II)またはFe(III)との共沈殿、③Feオキシ水酸化物への吸着。特に零価鉄粉の持つ強い還元力はPCBのように化学的に安定な有機塩素化合物を分解することができると報告されており、欧米を中心に実用化も進んでいる。 我々は湛水条件下(水田条件下)では鉄粉の持つ還元力がで直接的あるいは間接的に、畑条件下では吸着・沈殿により土壌中カドミウムを不活性化し、植物のカドミウム吸収を軽減できることを発見した(図1、2)。 なお、ヒ素吸収に対しても同様の抑制効果が認められた。

 

図1. カドミウム汚染土壌(10 mg kg-1 Cd0.1 M塩酸抽出)で栽培した後の部位別カドミウム含有率に与える零価鉄粉添加の影響
イネは湛水条件で、ホウレンソウは通常の好気的条件でポット栽培を行った。



図2.
栽培後土壌に含まれるカドミウム分画結果
+Cd+Fe(0):零価鉄粉添加(5g/100g土壌) +Cd:零価鉄粉無添加 

 


 

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